沈黙のセールスマン
なんとも不思議な感じのタイトルで、事件の鍵を握っているセールスマンがいるのだが沈黙を守っていて話してくれない、といったことを想像してしまったりするけれど、そういうわけでもない。いや、そうでもあるのか。そもそもの依頼はとある女性からのもの。弟が会社で爆発事故にあい入院しているのだが、面会を許可してくれないという姉からの依頼。事故からはかれこれ半年以上が経過しているにもかかわらず。その彼の職業がセールスマン。
調べていくうちにセールスマンにもかかわらず事故があったのは製薬会社の研究所であり、彼もその研究員としての働きもあったのだという。依頼人である姉の希望はとにかく面会を許可してほしいというもので、なんとかその要望は通ることになるのだけれど、途端にもう依頼の件はおしまいにしてくれという。明確にはしないものの製薬会社から買収金がたんまりとはいったため。
なんとも不可解な事件にかかわってしまったのでどうにもすっきりしないので、入院している弟の妻に話をもちかけあらたな依頼人として調査を継続していくと、なにやら警察からも手を引けとなかば脅迫され、その影には FBI の存在があるのだといわれる。ところがどうにもその話が嘘っぽい。そうして調べていくうちに、事件のとんでもない真相が少しずつ見えてくるという。
元妻のもとにいる娘がたまたま遊びにやってきて調査の手伝いをしたり、探偵サムスンの日常がそのままに描かれながら不可解な事件の謎がひとつずつ解決していく様がなかなかうまい。480 ページあまりの大部ではあるのにページを繰る手が止まるようなことはほとんどない。
やさしくてけれど頑固で、自分の信念に関してはあくまでもタフで、そんな愛すべき主人公サムスンの活躍は強くひかれるものがあるなあ。貧乏だけど。
入手困難なのかあ、残念。
沈黙のセールスマン (ハヤカワ・ミステリ文庫) マイクル・Z. リューイン Michael Z. Lewin 早川書房 1994-05 by G-Tools |
追記:10/15
手持ちの表紙画像を追加
| 固定リンク
コメント