異星人との知的交信 CETI
Communication with Extraterrestrial Intelligence(CETI)
谷甲州の「パンドラ」を読んでいるときにふと思い出したので取り出したところ、実は最後まで読んでいなかったということに気づいて改めて読むことにしたのだった。実に購入から 30 年あまりというところかもしれない(実際 1981/1 の第三版なので間違いはなさそう)。
今となっては天文ファンや SF ファンといったような人でも忘れていたり、あるいはそもそも知らないという人だって多いかもしれない。まして特別興味もない人にとっては、話を聞いても荒唐無稽なヨタ話と笑うかもしれない。著名な科学者や数学者、社会学者といったそうそうたる人物が集まって、知的な異星人とどうコンタクトをとるかということを真剣に議論した記録なので。
世に言うビュラカン会議。この宇宙に人類のような生命が存在する確率はどのくらいで、同等もしくはそれ以上の知性を持っている可能性はどれくらいなのか。そして彼らとコンタクトを取るとしたらどのような方法が考えられるのか、その機材は費用は効果のほどは。実際の通信内容はどのようなものであるべきなのか、などなど。1971 年という時代はさほど昔でもないし、さりとて昨今の科学・技術の進歩を思えば、新しいともいえない。けれどもたかだか 40 年ほどまえに、真剣な議論を戦わせていた専門家たちがいたという事実は、当時としては冗談のようであったかもしれない。
記録をきちんと残すということも会議の目的のひとつであったため、こうして議事録が出版され翻訳までされたのだけれど、正直それがゆえに一般人にとってはやや理解が難しい。誰にでもわかるように話されている内容ではないうえに、やや翻訳が古いのもあっていまひとつしっくりとくる内容とは言いがたいのは残念かもしれない。とはいえ、こればかりはその性質上どうしようもない。
ただ、そのベースとなっているドレイク方程式を俎上にした議論や、いかにして知的異星人と接触するのかといった技術的な議論の大筋のところなどは、詳細はわからないにしてもなんともわくわくするような議論がされているのだけは感じ取れる。
出席者がまた豪華。主たる呼びかけ人であるカール・セイガンやフランク・ドレイクはともかくとして、フリーマン・ダイソン(ダイソン球)、マーヴィン・ミンスキー(人工知能)、クリック(DNA)といった一見無関係のような学者も多数。ソヴィエトやアメリカの学者 54 名もが集まってあらゆる方面からの知見を寄せ集めての 5 日間の会議。自分にもっと基礎的な知識や理解力があったなら、より楽しめたのだろうなとも。
先にも少し触れたけれど、翻訳がややしっくりしない部分もあったり、なにやら会話になっていないのではないのかという部分もあったりで、できれば全面的な改訳が行われたらよいのかもしれないとは思った。
そうはいってもドレイク方程式関連の議論や、終わりのほうのサイクロプス計画の詳細な解説などはなかなかに興味深いので、いささか古い内容とはいえ今読んでも面白いのではないかなとは思う。
CETI はその後 SETI となったはずだが、さて今は継続されていたのだろうか。
異星人との知的交信 (1976年) カール・セイガン編、金子 務・佐竹誠也訳 河出書房新社 1976 by G-Tools |
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