リスクを伴わないリスク
あれはお盆の頃だったかもしれないのでずいぶん経ってしまったのだけれど、NHK でエネルギーの将来を考えるような生放送の番組をやっていたのだった。正直なところあまり関心がもてなかったのだけれど、確かニュースからの流れで惰性でそのまま見ていたような記憶がある。つまるところ原子力発電はこのままでいいのかというあたりな話なのだけれど。
個々の話は置くとして、最後にスウェーデンだったかの例を紹介したときのことが記憶に残っていたのだった。それは、消費者がどのようにして発電された電気なのかという種類を選んで契約できるという話だった。電力の販売会社だったかがいくつかあり、そこがいろいろなプランを提供する。水力発電だけの電力であるとか、風力発電だけの電力であるとか、あるいは、いくつかの組み合わせであるとか。
そうした発電形式を限定した契約を可能にしていて、とある家庭を紹介したのだが、それは「風力発電のみを購入する」というお宅。ご主人いわく「これも、この電気もすべて風力なんです」と。電気代は少し割高なのだそうだが、原発は嫌なので少しでも意思表示というか、なんらかの形に表したいということらしいのだった。
そこへ出演者の真山仁さん(作家)が尋ねた一言が忘れられない。「風力だけを買っているということは、風がないときは停電するんでしょうか?」と。答えとしては、そういうことはないのだそうだ。結局、さまざまな発電による電力を一括して送っているので、仮に風がなくて風車が止まっても電気は使えると。
しかし、それはリスクを伴わないおかしなことなんじゃないかなあと。風力だけを選択した以上は、風がなくて発電できない時に停電することもまた受け入れるべきなんじゃなかろうかと。
もちろん、総発電量に対する総使用量に余剰があって(あくまでも計算上でよいから)、それを蓄電していたとみなし、そのぶんについては風が止まっていたとしても使えるというのはあってよいと思うけれど、総発電量を超えて使用できるのだとしたら、それはおかしな話。その発電方法だけをあえて選択したのに、それに伴うリスクは他の発電方法で補ってしまっているのは奇妙な話。
いずれにせよ、世界中で電力のビジネス的な面と、社会のインフラとしての面との問題というのは、なかなか決定的な解決がないのだなというのを実感したというのが素直なところだったなあ。
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