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「はやぶさ」式思考法


4864100632「はやぶさ」式思考法 日本を復活させる24の提言
川口淳一郎
飛鳥新社 2011-02-04

by G-Tools

 本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。

 2010 年 6 月が近づくにつれて、それまでは「はやぶさ」ってなに? だった多くの人々まで一喜一憂しながら待ちわびたその帰還。そしてカプセル投下、回収。あまりにも過酷な運用状況の困難を耐え、まさにだましだまし帰還させたという物語にその興奮はなかなか冷めやらないものがありました。かくいうわたしもあまり知らないままいたひとりではあります。

 その後、小惑星イトカワ由来の微細な物質の採取が確認され、ますます注目を集めるところとなり、昨年から今年にかけて次々と「はやぶさ」関連本の出版が相次ぎました。そんな中で『「はやぶさ」式思考法』は、特に異色な「はやぶさ」本といえるかもしれません。

 はやぶさプロジェクトそのものについてではなく、過去の失敗や成功から学び、はやぶさプロジェクトに最大限に生かされたプロジェクトを進めていく上で何が大切なのか、ということに焦点をおいて書かれたもの。

 副題に「日本を復活させる 24 の提言」とあるように、とかく日本的な社会・企業において閉塞感を生んでいると思われる現状を打ち破るには、はやぶさプロジェクトのような手法が大きな意味をもつはずだと著者川口さんは言います。

 実際、重たい空気を打ち破って新たな試みや、斬新なことをしていこうと思うときに障害となるのは、古い日本的な体質というのは多くの人が理解しているであろうところであって、その意味で示されている 24 の提言はどれも首肯するものばかり。

 いくつか章題だけを抜き出しただけでも、それは推察してもらえるはず。

03:ルールは少ないほどよい

04:教科書には過去しか書いてない
07:「失敗する」チャンスを与えよう
09:スケジュールは必ず遅れる
11:失敗を隠そうとするな
14:迷うくらいなら、どっちでもよい
17:「こうすればできる」と考えよう
19:「わからないこと」を認識しよう
20:どうしたら運を拾えるか

大学院生の頃、長友信人先生から「今見えている物はみな過去の物である」とアドバイスを受けました。教科書や論文をどれだけ読んでも、そこに書かれているのは過去に過ぎず、新たな発想を提供する物ではないということです。(P.41 04:教科書には過去しか書いてない)

 投下されたカプセルにイトカワの微粒子が回収されたときに、川口さんが主張したのは「第一に国民に見せるべきだ」だったそうだ。理由は、

国民が誇りを感じ、元気を出し、活発に活動するようになること、科学技術政策は、それを目的としているわけです。ならば、感動の冷めないうちに、より多くの国民に見てもらうべきでしょう。そうしなければ、国家プロジェクトとしての意味が失われます。(P.44)

 よかれと思って失敗しないやりかたをなんでも教えてしまうようなことがよくあるけれど、それは必ずしも身に付かない。失敗するという経験をしなくては学べないことも多いもの。誰もが同じ道をほんの少しずつ違った形、違った時間の進み方で学んでいき、さながら時間礁のごとく、ゆっくりゆっくりと知識というものは進化していく、そんな側面を持っている。じれったいようでも失敗することは時として必要でもあります。

 これからの日本をつくるために考えなくてはならないのは、民族的な悪弊を打破すること。

人間にも「多様性」が必要です。「いろいろな発想をする人がいたほうがいい」--これは当たり前のように聞こえますが、社会全体をそういう方向に向けていくのはなかなか大変です。ことに我が国のような島国の単一民族国家では、ほっておくとどんどん均一化していく傾向があります。「みんなと同じ」だと安心感が持てるので、情報通信の発達とともに全員が同じ方向を目指してしまうのです。(P.209 23:教育の時代から研究の時代へ)

 この均一化するというのは、昨今のネットワーク社会においてもその一端を時折見ることがあります。今回、東日本の大震災を受けて、誰かが不謹慎だと言う声に過剰に同調して異様な圧力となって動きだしていったことなどは、ひとつやふたつではありませんでした。当初にあったつい買いだめしてしまったといった現象もまた、同様の心理背景があるかもしれません。

 技術者にとどまらず、まさに老若男女を問わず多くの人が一読して、こうした意識を共有することが、今の日本を変えていく一助になりそうだと思える一冊です。

 もちろん、そうして皆で読んで均一化してしまっては、元も子もありません。川口さんが言うのは、そうした意識を持って、それぞれが独特に考え行動していくことなのだと思います。

 かつて経験したことのないほどの大災害が起きた今だからこそ、本書の持つ意味はいっそう増しているといえるかもしれません。

きむらさんも時期を同じくして読まれていたとは。
 「14:迷うくらいなら、どっちでもよい」について、わたしは「迷ったときは、はじめの決定に従う」ということを自らに言い聞かせたいと思っています。




「はやぶさ」式思考法 日本を復活させる24の提言
  • 川口淳一郎
  • 飛鳥新社
  • 1365円
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書評

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