カビを防いで快適生活
![]() | カビを防いで快適生活 吉田 政司 幻冬舎ルネッサンス 2010-10-30 by G-Tools |
本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。
近年はインフルエンザや口蹄疫、ノロウィルスなど、人に直接関わると関わらざるとを問わず、微生物に関するニュースも多いもの。人々の衛生に対する関心もたかまっているとはいえ、きちんとそれが理解され実行されているかというと、あいまいな理解であったり、忙しさや面倒さにかまけておろそかにされてしまっていることも多いもの。テレビ番組などでも何度となくそうした話題は出るものの、結局そのときだけで忘れてしまうことも多いことを思えば、手元にあっていつでも確認できる書籍、それも比較的簡易に書かれた手軽なものは便利に使えるかもしれない。
そんな参考のひとつになるのが本書かも。カビ対策の仕事を長年続けてきたという著者がカビ対策に関して集中して説明されている。さほど深くはないが、十分にして広いというのが印象。決して悪い意味ではない。各家庭において日常的なカビ対策をするうえで必要なごく基礎的な部分について、コンパクトにまとまっているという点では必要十分。
カビの取り除き方、そして防ぎ方を簡易に説明されていて、家庭のさまざまな場所に応じた説明もなされているのでわかりやすい。逆に非常にコンパクトにまとまっているために、やや物足りなさを覚えることもないわけではないけれど、それはこの本の目的の範囲外と判断して、他の書籍にあたればよいこと。
市販のカビ取り剤などの使い方などについても触れていて、ありがちなプロの専門用具礼賛ということでもなく、また一方で潔癖すぎるのは微生物環境としてよろしくないのだという指摘もきちんとあるあたりは好感がもてる。
もっともはじめのほうで、カビの防除において必要なことのうち、湿度と温度はコントロール可能だが、栄養と酸素はコントロール不可としているのだけれど、酸素はともかく栄養に関してはある程度可能なのではないかとは思う。日々の掃除に気をつけることで栄養のコントロールは完全ではないとしても可能な範囲にはあるはずだ。風呂場にしろ、トイレや台所にしろ、「使ったら洗う。洗ったら拭く」を毎日の日課にできるようにすることで、栄養となる汚れは減らせる。もちろん、習慣にするまでは大変ではあるけれど。
追加でお薦めするのは湿度計を家のあちこちに置くということか。ひとめで様子がわかれば換気への意識も変わろうというもの。換気扇にも働いてもらう。
巻末の Q&A で「重曹や酢酸」についての質問で、
重曹や酢酸、クエン酸などは、よりナチュラルな暮らしを志向する人たちに人気が高いお掃除アイテムのようですが、カビ退治に有効か、どうか・・・。除カビできると言っている人も少なくないようなので、それを否定はしません。しかし、専門業者(プロ)は使わない、とだけは申し上げておきましょう。
と回答されている。カビを取り除けると言っている話は、少なくともわたしは知らないけれど(汚れを落とすという意味においての重曹の効果を言うのであれば、それは除くとして)、どちらかというと酢酸・クエン酸が掃除後の細菌の繁殖を防ぐ効果というのは、少なからずあるはずでは、とは思う。著者流に言えば、「除カビ」ではなく「防カビ」においては。
重曹は油汚れを落とすなど掃除には有効なのは間違いありませんが、カビに効くというわけではないし、そういうことを謳っている人も聞いたことがありません。このあたりはやや不十分な、恣意的なものを感じてしまった部分でもあります。
本書では簡単に触れられているだけですが、カビはどんなものにも繁殖するといって過言ではありません。そうしたさらに詳しい入門的な読み物として「微生物の話 ワインからコンピュータまで」(井上真由美、アグネ)などはお薦めです(入手困難ではありますが)。
時節はまさに年末の大掃除ということもあり、参考になる部分も多くありそうか。もちろん、いきなりすべてをと思っても疲れてしまうだけなので、これを機会に少しずつ意識を変えてみるきっかけとしても有用かも。
微生物の話―ワインからコンピュータまで (アグネブックス) 井上 真由美 アグネ 1982-01 by G-Tools |

カビを防いで快適生活
- 吉田政司
- 幻冬舎ルネッサンス
- 1260円
書評

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