あらあらかしこ
ユニクロのダウンジャケットの新しい CM を見ていて、それって違うのではないか? と思い下書きしていたのだけれど、どうやらここで使われているのは高村光太郎の詩の一節らしいとわかって止めた。言葉としてはどう考えても奇妙だとは思うのだけれど、作品としてあるものであるということと、現役作家なら修正することもあるいは可能だろうけれど、故人とあってはそうもいかない。仮に奇妙なものでも、それはそれとして、作品として受け止めるしかないよね、と。
で、いったんは女性がしたためた手紙風に書いてみて、「かしこ」と締めくくってみるなどしたのだけれど、そういうシャレも使えなくなってしまった。これはちょっと残念。
ということで、単純に言葉としてどうだろうということだけを記録してみると、「何処もかも冬だ」というのはやや奇妙な文章だと思う。「何処も」では場所を指しながら、「かも」では「彼も」であるから場所ではないものをさしているような。本来的には「何処も彼処も」となるべきなのだろうなと。
ただ、詩文としてのすわりのよさであったり、語感のよさであったりは「何処も彼処も冬だ」よりも、「何処もかも冬だ」というほうが、なんだかしっくりくるものがあるのも確か。ただ、それはやはり文学的な表現に限られて許されるものなのかもしれないとは思う。
「どいつも」と言ったら「こいつも」だし、「どれも」と言ったら「これも」だし、「なにも」と言ったら「かも」だし、「何処も」と言ったら「彼処も」だし。「なにもかも、みな懐かしい」と言ったら沖田艦長だし。「docomo」と言ったら・・・
まあ、まぎれもなく、冬ではあります。
なにもかも【何も彼も】漏れる所無くそう・する(である)ことを表す。「-- [全部]さらけ出す」
か【彼】
1.あれ
2.[「何」とともに用いて]ぼんやり指し示す言葉。「何も--も[=みんな]・なんの--の[=あれこれ]・なんでも--かんでも」どこ【何処】
[「いづこ」の変化] 不定の場所を示す。かしこ【彼処】
「あそこ」の雅語的表現。「ここ---・どこも---も[=皆]」かしこ
[恐れ多い意の雅語的形容詞「畏(カシコ)し」の語幹] 女性が手紙の終わりに、「これで失礼します」の意で結ぶ言葉。かしく。新明解国語辞典第4版
かしこ
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コメント
私も初めて聞いたとき違和感があったのですが、ググってみたら既存の詩の一節だったので言及するのは止めました。
今でもCMで耳にするたびにムズムズします^^;
投稿: tako | 2010.12.08 11:52
そうなんですよね。勢いあまって書かずによかったと思いつつも、やっぱりスルーはしたくないなあと、老婆心ながら書いてしまったのでした。
投稿: ムムリク | 2010.12.08 11:59