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2010年宇宙の旅


41501173302010年宇宙の旅〔新版〕 (ハヤカワ文庫 SF) (文庫) (ハヤカワ文庫SF)
アーサー・C・クラーク
早川書房 2009-11-30

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 映画「2010」を見たのをきっかけに再読してみた。といっても、正直なところまったくといっていいほど覚えていなかったので、はじめて読んだような印象。発売まもないころにハードカバーで購入し、確かに読んではいるようなのだけれど。

 映画は時間の関係もあるのか非常にシンプルで、あまり見ごたえのないものに感じた。さすがに木星を太陽にしてしまうあたりの映像化は迫力もあるし、印象には残るのだが、それ以外の部分はあまり物語がない。ハル 9000 の修復過程や、なぜ不可解な行動をとったのかという理由は一応説明されるものの、まあその程度。

 一方で小説のほうは、ずいぶんと話が異なっていたりする。物語としてはこちらのほうがずっと変化にもとんでいるし、面白い。映画にはない中国の宇宙船が先にエウロパに着陸して中国領を宣言したり、宇宙船内でのラブロマンスがあるかと思いきや、フロイド博士にとっては離婚の危機を迎えたり。

 ディスカバリー号との接続に関しても差異があって、映画ではワイヤーによる誘導路といった感じだったけれど、小説ではフレキシブルなチューブで物理的につないでいるようであったし。映画では米露関係が悪くなり、戦闘状態になったかのようだったけれど、小説ではそうした展開は一切なし。マックスが巨大なモノリスを探査に出かけていって死亡するということもない。

 最終的に木星系から脱出する期限についても、ずいぶん短く設定されていた映画とは異なり二週間あまり期間があったり。ボーマンの登場についてもだいぶ違いがある。離脱に向けてのシーケンスでハルが疑問を呈する場面の緊張感は、映画のほうがはるかにうまくできていて、小説はややそのあたりはおとなしめ。

 とはいえ、全体的にみると映画よりも小説のほうがいろいろよくわかる。なぜエウロパには着陸してはならないというのかなど、映画ではまるっきりわからないまま。このままを映画化しなくてもよいけれど、もう少し描かれていなければ意味がないような印象も。その意味ではちょっともったいない感じ。

 今になってみると面白いと思ったのは、次の部分。

古びた本が何冊か片隅にあり、壁には、「合衆国宇宙船、木星へむかう」とうたった新聞の一面記事が、額縁に入れて飾られている。ニューヨーク・タイムズの、印刷版としてはほとんど最後に近い号である。(P.201)

 「2010:odyssey two」が書かれたのは、1981 年から 1982 年にかけてのこと。

 また、度々噂になる「あの話」についても言及されていて面白い。

「チャンドラ博士、あれは本当なんですか ---- IBM に一歩先んじる意味で、あなたがハルという名を選んだという話は?」

「くだらんことを! われわれの半数は IBM 出身ですよ。それはもう何年も前から否定してきた話なんだ。多少知恵のある人間ならみんな知っていると思っていたが ---- H・A・L は、Heuristic ALgorithmic (発見的・算法的)の略だ!」(P.223-224)

 さて、小説ではこの先まだ「2061」「3001」と続くようなのだけれど、どうしたものかなあ。

41501109642061年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)
アーサー・C クラーク Arthur C. Clarke
早川書房 1995-03

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41501134753001年終局への旅 (ハヤカワ文庫SF)
アーサー・C. クラーク Arthur C. Clarke
早川書房 2001-03

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