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タゴガエル鳴く森に出かけよう!


4774142611タゴガエル鳴く森に出かけよう! -トモミチ先生のフィールドノート (Think Map 5) (ThinkMap)
小林 朋道 百瀬義行
技術評論社 2010-05-19

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 本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。

 この本には、あらゆる動物と自然にたいする愛があふれている。生物というよりも動物というほうが、より適切なのだろうと思うのは、ひとつには著者であるトモミチ先生自身が、そう使われていることと、動植物などを総称して生物というのであれば、おそらくトモミチ先生の興味は動く物にたいして、ひときわ高い興味を示しているから、ということでもある。

 そういう意味では、読み終えたからといって、動物たちの不思議な生態の数々や、驚くような発見といったものを知る、ということにはならない。もちろん、カスミサンショウウオの肺呼吸とえら呼吸とにかかわる不思議な推測とその解明であるとか、タゴガエルの珍しい姿であるとか、はたまたヒトのコドモという不思議な動物の生態であるとか、消えるイモリのなぞであるとか、いろいろの知見に触れることも確かではあるのだ。ただ、だからといって、科学解説めいた本ではまったくなく、まさに副題の「トモミチ先生のフィールドノート」という言葉に集約されている。

 ここで明かされるいろいろの動物の生態にしても、実のところそれが本題ではなく、むしろトモミチ先生がどんな活動をされていて、それはどんな理由があって、どんなことを考えているのか、というあたりが本題。そして、それもまた妙に科学ばったものではなく、まるでコドモのような純粋な興味をもって自然の不思議を解き明かしたいなあ、というもの。あるいは、動物たちへの尊敬や畏敬の念といってもいい。全編にあふれる動物たちへの愛が、そのやさしい語り口の文章に表れている。

 最終的には、それはトモミチ先生も含めたヒトに及ぶ。「地域の中心駅=部族の集会場」というその論は、なかなか頷ける部分が多いような気がする。新しく町が作られていくとき、そこには鉄道なり、道路なり、船なり、とにかくそれらの発着場が基点となって、商店ができたり道ができたりするものだ。今だって、新幹線などの駅をぜひ作って欲しいという意見は町の発展のためによくあることでもある。中心商店街なども、駅前からのとおり沿いに広がっていることは多いのではないかと。

 読後に、動物の知識が残るというよりは、なんだかたまには動物を見たり、触れたりしてみたくなったなあという、そんな暖かさの残る一冊といえるのかもしれない。なにも難しいことを考える必要などなく、身近な自然のなかにもたくさんの動物たちが生活しているわけで、少し視点を変えてみるだけで、それまで見えなかった、あるいは見ようとしなかった世界が広がってくる。そんな、入り口を教えてくれているようでもある。

 あえて、難を言えば、括弧書きがやや多用されすぎている嫌いがあることか。それも、なくてもよいのではないかというところまで使われていたり、くだけすぎた書き方が却ってマイナスなイメージにも感じられかねないようにも。もちろん、それがトモミチ先生の文章スタイルなのかもしれないけれど、やや違和感は否めない。

 たとえば、それは次のような場面。

小さいころ、家でカメを飼っていた(誰が主たる飼い主だったかは忘れた)。

 「わたし」といっていないことから、トモミチ先生ではないと、まずわかる。誰とはいわないが、家族の誰かが飼っていたのだなと。というか、「誰」であるかが重要であるなら、明示すればよいのだし、なくても困らないのであれば、あえてそれを括弧書きで補足する必要まではないのでは、と。あえてというのであれば、

小さいころ、主たる飼い主が誰であったかは覚えていないが、家でカメを飼っていた。

 とでもすれば十分かなと。もちろん、それこそ文章スタイルと言ってしまえば、それまでなので、どうしてもというものではないけれど。ただ、無用と思える括弧書きが、多いように感じたのは事実。

 さて、タイトルにもなった”タゴガエル”。その仲間で 2005 年に新種と確認された”ネバタゴガエル”。当時、テレビ番組にも取り上げられたということだが、「ワン」と聞こえる鳴き方をする不思議なタゴガエル。そのネバタゴガエルに魅せられて、研究に没頭し、カエル館まで作ってしまった人物を追った物語、「”ワン”と鳴くカエル 信州・根羽村「カエル館」物語」も、ぜひあわせて読んでいただけるとよろしいかと。

Storyofkaerukan

 まあ、本当に「ワン」かといわれれば、「ワン」でもあり、そうでないようでもあり、とはいえ、少なくともよくあるカエルのそれではないのもまた事実。タゴガエルつながりで、楽しい読書をさせていただきました。

4904699025ワンと鳴くカエル―信州・根羽村「カエル館」物語
山口 真一
一兎舎 2010-05

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タゴガエル鳴く森に出かけよう! -トモミチ先生のフィールドノート
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この記事をtwitterへRTする 著者の小林朋道さんは鳥取環境大学の教授であり、専門は動物行動学と人間比較行動学。 なんか、この専門分野を聞いただけで、僕の中には「うわ、きっと細かい観察好きで、ところ構わず(空気も読まず)興味を持ったら観察せずにはいられないタイプだ... [続きを読む]

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