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ウサギ料理は殺しの味


4488284027ウサギ料理は殺しの味 (創元推理文庫)
藤田 宜永
東京創元社 2009-12-20

by G-Tools

 本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。

 たまたま車の故障の修理のために滞在することになった小さな町で奇妙な事件が起きていると知り、いつしかその事件の渦中に巻き込まれていく元警察官であり元探偵でありという男シャンフィエ。奇妙な事件とは、毎週木曜日の夜に若い女性を狙った殺人事件が起きるというもの。そして木曜日だけに供される、とあるレストランのウサギ料理と関連があるような気配がでてくる。

 犯人につながるような発見はとぼしく、なかなか進展を見られないままに次々と殺人が行われ物語は終盤に向かう。その間に語られるのは実に多い、いや多すぎるというほどの町の人々のそれぞれの詳細な暮らし振り。ウサギ料理を出すレストランの店主は実はウサギ料理は嫌いで作りたくない。商店主はショーウィンドーの飾り付けを毎週更新することに情熱を燃やしつつも、疲れている。娼館では毎週ひとりの上客しか相手にしない高級娼婦がいて商品でしか代価を受け取らない。セールスマンは高級娼婦にお熱だが、いつも空振り。

 なにより、この町の誰もが好色すぎる。ミステリでもサスペンスでもなくポルノなのではないかと思ってしまうほどに。

 そして、そうした町の人々の日常が繰り返し描かれていくなかで、ほんの少しずつなにかが変化していく。事件は急転直下で容疑者逮捕へと。しかし、事件の真相がつかめないままに容疑者は死亡し、事件はあらたな展開をみせるのだが、意外すぎる展開はまさに快作・奇作というにふさわしい。

 町の人々の運命、町そのものの運命、そしてシャンフィエの運命もクルクルともてはやされ、どこへ辿りつこうとしているのか。

 終盤であきらかにされる、そもそもの事件の真相はきわめて奇怪なもので、そりゃないだろうというもの。とうてい読者には分かりえないよなあ、と思いつつ読み直せば、なるほどと思えない部分も少なくない。これはそのための伏線であったのかと思い直す。なんとも奇妙な作品。

 これまで体験したこのない物語の妙を体験させてくれるまさに快作の名に恥じない一作。

 残念なことは、解説によれば実に多作な著者であったにも関わらず、翻訳され紹介されているのは本書を含めても数冊しかないということ。どの作品も既存のミステリなどの枠にとらわれない作品であるようで、なんとも惜しい。近々一作は刊行が予定されいてるらしいけれど、継続して翻訳されるといいなあと。

 それにしてもフランス人名は読みにくいうえに、誰が誰やらわからなくなる。登場人物が多いだけになおさらのこと。それもまたこの作品のためには必要不可欠だったのでは、などと日本人としては勘ぐってしまいたくなるような。

 この快作を知らずにいるのはなんともったいないことかと思わせてくれる、不思議な一冊。


#旧本が好き!サイトのドメイン処理の不備により、意図しないリンク先となってしまうということで旧アドレスへのリンクを消去しています。(2012/02/12)

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