始まりは下からだったのかも
フィデルマ効果のもうひとつ。あるいはこれが先日の「洋書の背表紙の文字の並びの向きの違い」の理由ではないかという発見が。
アイルランド人の書物の収蔵方法は、本棚に立てて並べるのではなく、羊皮紙の書籍を一冊ずつ、あるいは数冊一緒に、書籍用の革の収納鞄に入れて、図書館などの壁に打ち込んだ釘に吊るす、あるいは鞄ごと棚に載せる、という方式であった。このような書籍用鞄は、本を持ち運ぶ際にも、よく使われた。キリスト教の布教に努める聖職者にとって、福音書、聖務日課用の祈祷書、その他の書物の携帯は必須であるため、布教者用に肩紐で肩にかけて使用する書籍鞄も、考案されていた。(「蛇、もっとも禍し(上)」P.53)
鞄に本をいれるときどのような向きでいれるだろうかと考えると、ふたの閉まる側、肩から下げるイメージであれば体にあたる面ではなく外に向いている面、こちらに表紙がくるような入れ方になるのが多いのではないかと。ちょうど壁に鞄を下げたときに表紙が手前にあるという形。
この状態で中の本を確認しようとすれば、ふたを開いて背表紙を見るときに、文字の並びは「下から上に」の向きになる。棚に置かれた場合はどうかといえば、重なった状態ではどのみち確認できないので、いったん取り出して開くと考えればあながち不便というわけでもない。
とすると、アイルランドあるいはケルトの影響を受けた地域で、下から上の文化が伝承されたという可能性があるのではないかと。
あるいはそもそもが「下から上」だったのが、本の種類も数も多くなっていき、棚に直に並べる習慣がでてきたことを受けて「上から下」が出現してきたのか。(イギリスはともかく、カナダとアメリカあたりが上からであるのは、新しい文化・習慣が生まれたとしても不思議ではないような)
なにかそんなことを想像させる発見だった。
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