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水時計


4488278051水時計 (創元推理文庫)
玉木 亨
東京創元社 2009-09-05

by G-Tools

 本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。

 凍てつくイギリスの湖沼地帯の川で一台の車が発見され、中から無残な体勢の遺体が見つかり、翌日には修復工事の始まった大聖堂の屋根の上で 30 年以上はたっているかという白骨死体が発見される。白骨死体のほうは当時起きた事件の犯人と思われた。

 地元新聞の記者であるドライデンが取材を進めていくうちに、どちらも過去の事件との関連があると思われ、核心にせまりつつ彼や過去に事故により意識不明のままになっている彼の妻に脅迫めいた動きがおよぶようになる。

 やがて明らかになっていく事件の真相は数々の秘密もまた明らかにしていく。

 テレビの二時間ドラマなどには新聞記者などが事件を解決していくものもあるけれど、それらはどうしても記者らしくない。あくまでも記者という設定の探偵であったり警察官のようなイメージがどうしてもつきまとう、そんな描かれ方が多いような気がする。

 その点、ドライデンはきっちり記者然としている描かれ方が印象的。ありがちなミステリの匂いはやや弱く、淡々と事件を取材して追いかけるうちにそれぞれの事実がかみあっていく様がなかなか心地よい。

 ただ、結末はあまりに一気に感じられて唐突な思いをしていたのだけれど、解説を読むとどうやらそれは細部の読み込みが足りなかったのかもしれない。細かく張られた伏線に数々のヒントがちりばめられているらしいのだけれど、再読しても気づかないかもしれないといわれるようなものだとちょっと辛いような気がしないでもない。

 タイトルになっている水時計についても、いまひとつ関連性に乏しいのではないかと思っていたけれど、作品全体に川や水が関わっていることや、ドライデンの来歴などを含めて作品そのものが大きな水時計のように完結していくというような解説の言葉は、なるほどとというところか。

 それでもまるでゲームの攻略本のような解説がないと読み解ききれないというのは、ちょっと残念なようにも思うけれど。おそらく大多数の人にはそこまでの理解が得られずに終わるのだろうから。もちろん、そのための解説でもあるわけだが。

 冬の寒さのなかで読むには寒さが身にしみすぎる作品なので、暖かな部屋のなかでのんびりと思いをはせながら読むというのがよいかもしれない。

 気になった箇所をひとつ。

スタッブズがもったいぶった手つきで透明のビニールの証拠品袋を取り出し、ノギスを使って硬貨をなかに入れた。(P.129)

 スタッブズは刑事なのだが、なぜノギスなんかを持っているのか。鑑識係りから借りただけとも思えるけれど、手袋はしないのだろうかとか、なにもノギスのような不便なものを使わなくてもとも思ったり。はさめないわけではないけれど、普通はそんなまどろっこしい方法は取らないだろうなと。

 異国のことなので、ところかわればということでもあるわけだけれど。

 いずれにしても、この作品の本質を読み取るには何度か再読する必要があるのかもしれない。


#旧本が好き!サイトのドメイン処理の不備により、意図しないリンク先となってしまうということで旧アドレスへのリンクを消去しています。(2012/02/12)

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