州知事戦線異状あり!
州知事戦線異状あり! (創元推理文庫) 高澤 真弓 東京創元社 2009-09-30 by G-Tools |
本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。
トロイ・クックという名前になんとなく覚えがあったものの、なんだったろうか、と思っていたのだけれど、昨年の今ごろに読んだ「最高の銀行強盗のための47ヶ条」の著者だったと帯を見てようやくわかった。よくいえばそのくらい印象のまったく異なる作品に見えたということかも。まあ、単純にすっかり忘れていたということでもある。
カリフォルニア州での州知事選挙の候補者のひとりが死亡する事件が起き、さらに市長を務めていた女性候補が命を狙われ、意識不明に。女性候補の弟でもろもろの揉め事を解決することを仕事としているジョンが注意を配っていたなかでの事件。
犯人は 100 人あまりいる候補者のなかにいる。
ジョンと相棒のハーリーが捜査していくなかで、上院議員でもあるジョンの母親が奇抜なアイデアを提案。ジョンが姉の代わりに候補者となるという前代未聞のウルトラC的な手段。選挙運動をしながら犯人を見つけ出すことができるのか、そして選挙のゆくえはどうなるのか。
全体の雰囲気は前作と同じようなものなのだけれど、出来栄えはすっかり違っていてより洗練されたといっていい。なんとなく違和感を覚えてしまった前作とは違って、テンポといい展開のスムースさといい会話のしゃれた空気といい、こなれたものになっている。そのため 430 ページあまりあるにも関わらずどんどんページが進む。
相変わらずの文体は好みが分かれそうだけれど、訳文がなかなかこなれているのもあってさほど違和感はないかもしれない。まあ、多用されている太字強調はあまり意味がないように思うのだが、こればっかりは仕方ない。
ハリウッド映画になっても案外おもしろいのではないかという展開なので、あるいはいずれそういう話が起きてくるのでは。三作目も本国では出版されるということで、近い将来翻訳でまた読めそうだ。それでさらに洗練されていたとしたら、エンターテインメント系の注目すべき作家のひとりとして確立するといってもよいかもしれない。
ドタバタしつつもユーモアもあり、ちょっとしたお色気のサービスもある。とにかくスピード感たっぷりで突っ走ってくれる爽快な読後感。たまにはひたすらおもしろいものが読みたいという向きには特におすすめ。
まったく味わいは異なるけれど、こちらの選挙も面白い。
町長選挙 (文春文庫) 文藝春秋 2009-03-10 by G-Tools |
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