トウシューズはピンクだけ
![]() | トウシューズはピンクだけ (創元推理文庫) Leslie Meier 東京創元社 2008-02 by G-Tools |
本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。
三人の子供の母であるルーシーが、地元ティンカーズコーヴで起きる事件を解決に導くシリーズの第2弾。探偵とまでいってしまうとちょっと言い過ぎなところもあるものの、テレビの二時間コメディサスペンスを見ているような軽快さで読み進められるという意味では非常に安定感のある作品。
今回はお腹の中に四人目がという状況にも関わらず、殺人事件に遭遇してしまったり、子供たちが通うバレエスクールの発表会が近いというのに突如失踪してしまった元バレエダンサーの老婦人の行方を気にしてあれこれ探して回ったりというなんとも活動的なルーシー。それでも、さすがにちょっとお腹の子が気になるのでいささか行動も控えめになってしまいがち。そんなところもまたうまい味になっていたりするのは確か。
殺人事件では知人が容疑者として逮捕拘置されてしまったどころか、凶器となったのはとある理由で貸すことになったルーシーのビデオカメラ。娘たちのリハーサルを撮影したかったのにビデオカメラは証拠品として警察に。
一方の失踪事件。形式的な捜索はしたものの、老人というのは時としてふいにいなくなるものだなどという理由をもってして警察の捜索はいったん中断。もっとも遺体が発見されたわけでもなく、身代金要求の電話があったわけでもないとあれば、事件性を特定できるわけでもなく、わけもなく捜索を継続できるということでもない。
いったいどうなっていくのか、ちゃんと物語は収束されるのかと思っていると、意外な関係から事件の全容解明の糸口が見つかるというあたりは、なかなか面白い。なるほど、その行動にはそういう理由もあったのか、とわかってくるあたりから事件は佳境にはいっていく。
一見善人が悪人かもしれないし、悪人に見えて善人かもしれない。外向きの顔と家庭内での顔とはまた違うということもあるかもしれない。隣の家のことであっても、その実際の暮らし振りとか生活習慣、家のなかでの振る舞い方の違いなんてことは知りようもない。
それにしても、そんな大きなお腹で無茶をしちゃいかんだろう、というのは、まあご愛嬌。最後はすべてが丸く収まってくれるという点でも安心して読める軽めのエンターテインメント。
気になったところとしては、細かく分けられた各章には、ピンクシートと呼ばれるバレエ発表会の注意書きの文言がひとつずつ惹句としてつけられていて、きっかり最後までそれらが収まるという仕組みになっている。ただ、それが特に章の内容に絡んでくるということでもなく(ごく一部はそうと取れないこともないのだけれど)、ちょっともったいないようなところも。せっかく使うのであれば、なんらかの形で絡んでいたならよりひねりが効いてよかったのではないかと。
とはいえ、トントンと実にいいリズムで展開していく物語を体験できるので、気が付くとページが進んでいるという具合。秋の夜長にじっくり、と思ったものの、あっという間に読み終えてしまった。たまには軽めのもので楽しみたいという向きにはお薦めというところでは。
#旧本が好き!サイトのドメイン処理の不備により、意図しないリンク先となってしまうということで旧アドレスへのリンクを消去しています。(2012/02/12)
| 固定リンク
コメント