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幽霊の2/3


4488168051幽霊の2/3 (創元推理文庫)
駒月雅子
東京創元社 2009-08-30

by G-Tools

 本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。

 親となった人がプレイヤー一人ひとりにクイズを出していき、間違えると幽霊の 1/3 となり、もう一度間違えると幽霊の 2/3 、さらにもう一度間違えると幽霊の 3/3 となってすなわちゲームから落ちる。そうして最後のひとりになるまで続けたところで、親が入れ替わるというパーティ・ゲームの名前をタイトルにした作品。

 あらすじで読んでも、実際に作中でその場面がきても、はたしてそのどこが面白いのかと思ってしまうゲームで、物語そのものまで大丈夫なのかと不安に思ってしまう出だし。

 そのゲームのさなかにパーティの主役でもある当代の売れっ子作家が死んでしまう。毒物による他殺の可能性が浮かぶものの、招かれた人物の誰もが彼に死なれては困るという人やまったく初対面であったりと、すぐには怪しい人物も見えてこない。

 ところが中盤になって死亡した作家の過去をさぐっていくうちに、にわかに物語が動きだす。事故にあって記憶をなくした彼に作家としての才能を見出して、作り物の過去で彼を作家としてデビューさせていた出版社、エージェント。招待客のひとりでもあった精神科医のベイジルが警察の依頼を受けて調査をするうちに作家の謎だった過去が次第にあきらかになっていく。

 その過程は実に地道ではあるものの、確かな分析にもとづくもので、ベイジルの精神科医という役どころがうまく生かされていて、ちょっとした言動の齟齬を見逃さないところは再読すればなお味わいが増すはず。

 そしてそのあたりから「幽霊の 2/3 」というタイトルの持つ意味に気づかされることになって、作者マクロイの巧みさに思わず頬がゆるむ思いになる。

 作家の過去が次第にあきらかになるにつれ、さらに作家の妻と出版社、エージェントらとの欲望うごめくやりとりが展開され、読者としては次第に物語の全貌が見えてきたと思ってしまうのだが、マクロイはそう簡単に終わらせてはくれない。最後に思いもよらぬびっくり箱を開いてくれる。キーワードはやはり幽霊の 2/3 だ。

 50 年あまり前に出版され邦訳も数年後になされたそうだが、ながらく絶版になっていたものを読者リクエストの第1位ということで新訳としてよみがえったという作品。なるほどその期待に十二分に応えてくれる作品だと読み終えた誰しもが納得できるはず。

 この巧みな構成はただただ自分で読んでみるしかない。迷わずに手にとって損はないはず。

 この冬にもさらに一冊新訳で刊行予定とのことで、楽しみが続きそう。

#当時も「レギンス」という呼び名だったのかはちょっと気になるところ。いやまあ原文が leggings なのかもしれないけれど。


#旧本が好き!サイトのドメイン処理の不備により、意図しないリンク先となってしまうということで旧アドレスへのリンクを消去しています。(2012/02/12)

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