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ゾティーク幻妖怪異譚


448854102Xゾティーク幻妖怪異譚 (創元推理文庫)
大瀧啓裕
東京創元社 2009-08-30

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 本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。

 新井素子が作ったのは現代的な話し言葉をそのまま小説にもってきた文体で、ことに若い世代には読みやすく、しっくりして理解しやすいもので、当時としては一種驚きを持って迎えられたものだった。今ではそれがケータイ小説などに進化したとでもいおうか、非常に単純化されたものが多いような印象。

 「金剛石のレンズ」に続く幻想文学「ゾティーク幻妖怪異譚」はそうした現代的なものとは対局に位置するような、詩的で華麗な言葉がつむぎだす魅惑の世界。色鮮やかで絢爛豪華、芳しさまで感じるような匂いたつ描写、一方で闇や死、不浄なものの身の毛もよだつような臭気までも感じさせ、かと思えば妖しくも官能的な描写が悩ましくせまってくる。これほど魅惑的な文章はそうそうお目にかかれるものではないでしょう。

 そうした文章を生かしているひとつは、およそ 100 年あまり前に書かれたということを反映する古式めいた言葉や言いまわし。これを単純に今風の言葉に替えてしまったのでは、ゾティークの世界観が成り立ち得ない。

 それでいて古文を読んでいるような妙な堅苦しさでないのは、古めかしい言葉を使いながらもうまく現代的な表現にまとめている訳者大瀧さんのうまさというところかと。

 ひとつひとつはごく短い物語ではあるけれど、ゾティークという地球最後の大陸という設定が非常に丁寧につくられているために、物語の世界がしっかりしていてそれぞれがどこかしらきちんとつながっている。読み進むうちにその世界観が確固としていって、まさに疑似体験するかのような体験ができる。

 解説の豊富さもまた別格で、短編ひとつ分をゆうに超える分量。けれどもわたしも含めてはじめて著者スミスを知ったという人にとって、それは十分にこの物語を補完するに必要なもので、ゾティークが生まれてきた背景をさらに知り、物語をさらに理解するのを助けてくれる。

 まさに温故知新というような魅惑的な連作短編集で、解説で触れられていたその他の著作についてもいずれ読んでみたいもの。

 もちろん、このような詩的な描写の多い文章は読者を選ぶといわざるをえないだろうけれど、ぜひとも言葉の真の力を感じさせるような物語を多くの人に体験して欲しいもの。

 いくつか気になった誤植かと思われる点。

ルナリアに促され、ファルモルグはおれたちをこの任務につかせたのだ。(P.169)

 ファルモルグ → ファモルグ


祭司に身をやつしたわずかばかりの部下ととともに、(P.380)

 部下ととともに → 部下とともに
 (「と」がひとつ余計?)

4488538029金剛石のレンズ (創元推理文庫)
Fitz‐James O’Brien
東京創元社 2008-12

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