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ジュールさんとの白い一日


4870140519ジュールさんとの白い一日
オルセン 昌子
赤ちゃんとママ社 2009-07-16

by G-Tools

 本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。

 ある冬の朝、アリスの夫ジュールがソファに座ったまま亡くなっていた。朝のコーヒーをいれたところでソファまでやってきたところで息を引き取ったらしい。よる年波とはいえふいにやってきた夫の死にとまどうアリス。これからどうするべきなのか、なにをするべきなのか。それでいてふと頭に浮かぶのは夫との思い出。

 どうしていいかわからないまま、アパートの 3 階下に住むダビットという青年がいつもより早くやってくることになる。ふとしたきっかけで毎朝 10:00 になるとジュールとチェスをするために彼はやってくる。そしてきっかり 10:30 になるとやめてまた帰っていく。彼は自閉症だった。

 でも夫ジュールは死んでしまっている。どうしたものか。不安に思いつつもダビットを迎えると彼の反応は普段とさほど変わらない。

「ジュールさんは死んでいます」

「これはジュールさんの<外側>だけです」

 彼は淡々と事実を見つめる。

 アリスはジュールに話せずにいたあれこれを、思い描きながら語りかける。その時々にダビットという存在が収まる。降りしきる雪の夜。真っ白な葬送の儀式にも似た三人の時間。アリスとジュールの別れをテーマにした物語が主軸ではあるけれど、実はそれはシチュエーションにすぎず、本質のところはダビットを描きたかったのではないかとも思える。

 いまや人の死も生もなんだか遠いものになっていて、これほど身近な死はあまりないかもしれない。それでも直面したとしたらどうかといえば、確かに驚き動転するだろうけれど、きっとこれは日本ではない異国の物語だからこそのひとつの形なのだろうなと。もちろん物語であるわけではあるけれど、ひとつの葬送の形として理解できる形ではあるなと。

 不安に思いつつもダビットを受け入れることで、結局アリスは心の平安を手に入れることになるし、それによってジュールの死を受け入れることもできていくわけで、単に愛する人の突然の死をテーマにしているというよりは、それはあくまで設定にすぎず、そういう特殊な状況下におくことで自閉症というものについて考えさせているという読み方もできるわけだ。

 事実、解説は小児科医によって書かれている。

 全体としては淡々と時間が過ぎていくだけで、ことさらに重いテーマが描かれるでもなく、いってみれば淡々とまた物語りは終わる。それだけに読後になにかを残させるともいえるのかも。

 時には、こんな時間も、悪くない。


#旧本が好き!サイトのドメイン処理の不備により、意図しないリンク先となってしまうということで旧アドレスへのリンクを消去しています。(2012/02/12)

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