カオスの商人
カオスの商人 (創元推理文庫) 新谷 寿美香 東京創元社 2009-05-30 by G-Tools |
本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。
主婦のジェーンがみずからの好奇心から(といってもいいのかな?)事件を解決していくシリーズの 10 作目。確かに 1 作目の「ゴミと罰」のタイトルとか、特徴あるイラストの表紙とかは見覚えはあるものの、読んだのは今回がはじめて。冒頭はアメリカン・コメディにありがちなギャアギャアうるさい感じがして、ちょっと失敗したか、とも思ったのだった。
ところが中盤からはそうした雰囲気もややおさまり、事件は起きたもののコミカルな雰囲気とクリスマス前のあわただしさなどが普通に描かれていて、すんなり物語にはいれた感じ。
解決にいたるヒントはあとから思えば確かに提示されていたようであるし、こいつあたりが怪しいと推理する余地もあってそこそこミステリとして楽しめる。きっちりと謎解きを楽しむというタイプの作品ではないので、解決そのものはやや唐突にやってくるけれど、ちょっとした退屈な時間にのんびりと楽しむにはちょうどよいかもしれない。
難を言うと、女性の名前に似たようなものが多くてちょっと厳しい。ことにカタカナになってしまうと一瞬混同してしまうこともしばしば。ジェーン、シェリイ、ジュリアン、シャロン、といったところ。カタカナ名前が覚えられないので翻訳物は苦手、という人にはすすめ難いかもしれない。
謎解きやミステリとして楽しむというよりは、恐らく主人公たちの愚痴や会話が楽しいので、気の合う友達とおしゃべりしているという雰囲気を一緒に楽しめるというところが人気なのかも。その意味では主婦層に共感を得そうだ。
残念ながら 9 作までを翻訳された方が亡くなられているということで、今作からはあらたな方に変わられているということ。以前のものは読んでいないので比べることはできないけれど、雰囲気のあるよい訳ではないかなと思う。これまでのファンの方にとっては多少の抵抗があるかもしれないけれど。
ちょっと気になったのは、はじめのほうで出てくる「反対隣」という言葉。間違った言葉とは思わないものの、自分にとってはやや耳慣れない表現だった。意味としては、道を挟んだ向こう側の家の両隣を指すのだろうと思うのだが、「向こう三軒両隣」という言葉もある。ここは「向こう隣」のほうが良かったのだろうか、などとも思ったが、どちらがより一般的かはよくわからない。
ただ、「向かいの家」とか「お向かい」とかは言っても「反対の家」といった言い方はあまりないような気もする。といって辞書的に間違いとかいうわけでもないようなので、あくまで個人的な感じ方にすぎないかもしれない。
#旧本が好き!サイトのドメイン処理の不備により、意図しないリンク先となってしまうということで旧アドレスへのリンクを消去しています。(2012/02/12)
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