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珊瑚の涙


4488149057珊瑚の涙 (創元推理文庫)
Juanita Sheridan 高橋 まり子
東京創元社 2009-02

by G-Tools


 本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。

 ハワイを舞台に、ハワイの文化や伝統を題材に折込んで展開する物語。ミステリーというよりは軽いタッチのサスペンスというのが適切かもしれない。いやまあ、ミステリーとサスペンスとの違いはなんだ、と言われると困ってしまうところはあるのだけれど。

 まずもっていえるのはなにも知らずに読めばまったく時代を感じさせないということか。もちろん携帯電話がないとかパソコンがないとかはあるにしても、そこはハワイの昔ながらの人々も暮らす島というイメージで思えば、あまり気にはならない。実際は 50 年以上も前に書かれた作品であると思うと、この舞台設定というのは実にうまいこと機能しているなと思う。

 ハワイに行くために飛行機でなくて船を利用するというあたりとかも、当時すでに飛んでいたかどうかはわからないが、なんとなくそういうのもありかと思わせる空気が漂っている。

 ただ、ミステリーとして考えたら、いまふたつくらいの印象は否めない。着いたばかりの知人宅で自分の荷物が荒らされたり物が盗まれたりというのに、その後もまったく警戒心がないのは、キャラクターの性格ということにするにしても、ちょっと辛いような。

 最後の 20 ページくらいまで、なにもわからない、知っているらしい人間もかたくなに語らないという状況にも関わらず、関係者を集めて話を始めるとあんなこともこんなことも、「いつのまにそんなことまで?」ということまで語られてしまったりというのは、ちょっと都合が良すぎる。

 動機についてもやや理解に難しいところもあって、いまひとつスッキリと終わったという印象ではなかった。もっとも、それはハワイの文化に詳しくないからという側面があるのも理由のひとつではあろうかとは思うけれど。

 とはいえ、全体としては展開がなかなか面白く、いやまあよくもそこまでお人よしになれるなあとか思ったり、物語としては十分に楽しめる。謎解きのミステリーを期待しなければ、十分によくできた作品ではないかなと。さながら、ちょっと出来の悪い、というかイライラさせられるタイプの二時間サスペンスドラマを見ているようなとでもいおうか。

 ハワイが好きでハワイのことに少しでも詳しければ、より楽しめるのではないかとも思う。

 反面、作中何度となく出てくるハワイの言葉にもう少し訳注をいれてもらえたらよかったかとは思う。聞きなれない言葉なので以前に出ていても忘れてしまうし、そのうちにハワイの言葉なのか人の名前なのかよくわからないまま読み進めていたこともあったくらい。

 気になったところとしては、主人公のジャニスが原稿をタイプライターで打ってそれをアメリカ本土にいる自分のエージェントに送るという件のところで、なぜかその原稿をホテルの知人にタイプしなおしてもらわなくては送れないというような場面。ホテルの知人が使うのもタイプライターのようなのだが、なにか違いがあるとでも? 手書きの原稿をタイプしてもらうというのであれば、わからなくもないのだが、確かに自分でもタイプライターでと書かれている。なにか奇妙に感じられた。

 また、途中を端折りすぎてしまうきらいが著者にはあって、たとえば、

 ドクター・アサトンはつぶれた車に駆け寄り、リリーを家の方に引きずり寄せた。その瞬間、ガソリンタンクが爆発した。

 消防隊が消火作業を終えて現場から去り、ほどなく、警察が全員を事情聴取した。(P.280)

 「爆発した」の次の行(間隔が空いているわけでもないし、章が変わっているわけでもない)で消火作業が終わってしまっているのは、いくらなんでも端折りすぎなのでは。せめて「一時間後」くらいの言葉があればまだしもという風にも思うのだが。そんなところが何度かあるのが、小説としては気になるところ。

 残念ながらウェブを見ても著者の略歴や著作について多くを知ることができなかったので、なんともいえないのだけれど、寡作の人ではあったようで、そうした意味ではあるいは文章修行が十分につめないまま終わったのだとすれば、それもまた仕方ないのかもしれない。

 もちろんそれらは本当に瑣末なことでもあるわけで(小説家として大成するには決して瑣末ではないにせよ)、スリリングな展開を存分に楽しめる娯楽小説としての意義は十分に果たしているとは思う。

 余談。ハワイ語でウィキウィキというのがでてくるので、wiki の語源なのかとあらためて調べてみたらそうらしい、と今更ながら知る。早いという意味を持つそうな。なるほど。

 いずれ江渡さんのこちらも読んでみたい。

4774138975パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)
江渡 浩一郎
技術評論社 2009-07-10

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#旧本が好き!サイトのドメイン処理の不備により、意図しないリンク先となってしまうということで旧アドレスへのリンクを消去しています。(2012/02/12)

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