町長選挙
町長選挙 (文春文庫) 奥田 英朗 文藝春秋 2009-03-10 by G-Tools |
精神科医伊良部のシリーズ3作目。相変わらずの変人ぶりだけれど、どうしてもテレビドラマの影響でこの太った脂ぎった医師の姿が阿部寛のイメージになってしまって困る。文章と脳内イメージのギャップが激しい。でも体型を除くといいイメージなんだよね。
前半2作はパロディなのだけれど、キャラクターもその舞台背景などもほとんどそっくりそのままなので個人的にはちょっと好みではない。そこまでやってしまうと小説家としての創造する楽しみってもはやないじゃないかと思ってしまうので。いやまあ、そこはきちんと小説としてまとめているわけではあるけれど、それまでがそうしたパロディがなかった(と思う)ので、違和感は否めないわけで。
女優の話は特定の誰というわけでもないのだろうけれど、複数のモデルをついつい想像してしまうのがまだよいかな。ありがちな話だけに無難にまとまっていたところ。
最後の表題作「町長選挙」はもはや一番楽しんで書いたのだろうなという。お遊びがだんだんエスカレートしていくので、読者によっては嫌悪を覚えるかもしれないけれど、わたしは「あー、じれったいやつよ」などと思いつつもうまい具合に大団円にもっていったという意味でやはり表題作にたがわぬ出来になったのではないかなと。
それにしてもかつて「モノマガジン」での連載を楽しみにしていたころに、現在の小説家の姿など想像もしなかっただけに、うれしい出会いというものかなと次回作を楽しみに待っているのであった。
| 固定リンク
コメント