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万物を駆動する四つの法則


4152090073万物を駆動する四つの法則―科学の基本、熱力学を究める
Peter Atkins 斉藤 隆央
早川書房 2009-02

by G-Tools

 本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。

 熱力学の4つの法則をコンパクトに解説する。けれども、ポピュラー・サイエンスや一般向けの入門書という姿勢で臨むと玉砕すること間違いない。とはいえ指向としてはそちらを向いているのもまた確かなことなのだけれど。

 第0法則の温度の本質あたりはまずまずよい。身近な摂氏や、わたしたちにはあまり身近ではないけれど知られている華氏などの意味。また絶対温度も持ち出して、それらで見るよりも温度の逆数βで見るほうがよりよくすっきりと表現できるのだと説明する。

 温度が低い時のエネルギー準位の占有数はより低い位置に集中的に現れるけれど、温度が高くなるとその分布としては高いものよりも低いもののほうが多いものの、その差は次第に少なくなって全体的に分布するようになる。温度が低く分布が集中してしまう状態のβは大きく、温度が高く分布が分散している状態のβは小さいことを意味する。逆数という名の通り、現在使われている温度単位の考え方とは反対で、温度があがるほど(ベータであらわす)数値は小さくなり、温度が下がるほど(βであらわす)数値は大きくなる。

 まだ理解が十分でないのでうまく説明できないけれど、読みつつ整理していくとなるほどと頷けるはずだ。

 第1法則の「熱とはプロセスだ」あたりもまずまず。

 問題は第2法則のエントロピーあたりからだ。

 「エントロピーとは何か」(堀 淳一、講談社ブルーバックス)なども読んでいたので、なんのことはないと思っていたのだけれど打ちのめされた。分かるのだが、わからないといった感じ。

 もっとも、それで悲観する必要はないのだと思う。本書にもこう書かれている。

第2法則は、深遠であるうえに、難解なものとしてよく知られ、科学の素養を測るリトマス試験紙と言われている。(P.67)

 さらにはこの理解の難しさを高めているのは、ありふれたポピュラー・サイエンスの類書とは異なるという特徴によっているのかと。訳者のあとがきでも触れられているけれど、

本書は気軽に読めるポピュラー・サイエンスではない。読者に大いに思考を求めるのだ。(中略)、本書では、熱力学の本質を考察するうえで、論理と数式が駆使される。(中略)だが、よく読むと、ところどころわざと一部の導出過程を省いて記述している箇所があり、これが気になったら自分であいだを埋めていかなければならない。(P.167)

 実際、なんの迷いもなく専門用語がすらすらと並べられたりしてとまどうことも少なくない。あとになって解説されるものもあるが、ないものもある。解説も基本は文章によっているので、少ない図示と見比べながら、自分の頭のなかで考えて補っていかなくては、なかなかいわんとするところを理解することは難しい。

 そのため、何度もページを戻って読み直しつつ進めていくという感じで、ページ数の割りに読了までは時間を要する。けれども、それこそが著者アトキンスの目論見通りということなのかもしれない。

 第2法則については、さまざまな表現の仕方ができるようで、順を追って説明されていくのだが、「熱源から取り出された熱が、すべて仕事に変換されるような循環過程はあり得ない」などはわかりやすいか。先日も日本人のだれかが永久機関を発明したということで大々的な発表を行い、新聞でもまことしやかにとりあげたというのをやじうまWatch で見たけれど、それはとうてい無理なこと。

 たとえば冷蔵庫。庫内の物から熱を奪い、庫外の温度の高い環境に熱を捨てるには仕事をしなければならない。つまり電源につないで動かすということが必要なのだと説明する。電源により動かすことなく自発的に温度が高いほうへ熱が移動することはありえない。

 エアコンもしかりで、そうしたあたりまでの日常の例示はまあまあ理解もたやすい。けれど、その先に進んでいくとどうにもすっとは理解が進まない。このあたりがもどかしい。

 発展したところでは、人体の生命活動もまたエントロピーに切り離せないというあたり。食物から栄養を吸収し、物質を合成している過程はエントロピーを下げる非自発的な活動で、つまり系全体としたら無理のある活動とでもいうもの。ゆえに死亡するとそれらがなくなって自発的な活動として腐敗・分解などが起こり、エントロピーは増大する。

 熱力学についてコンパクトでありながら全体にわたって(多分)必要十分に解説されているという点で、非常に有意義な本なのだとは思うが、ちょっとした科学好き程度の読者がうかつに手を出すとなかなか手ごわいということは知っておくべきかも。

 けれども、そんな思考の過程も楽しめるという読者であれば、あるいは新しい知見の世界が待っているかもしれない。大学での副読本としてなら最適な一冊ではないかと。

 ということで、もう少し読み直しつつ思考を続けようと思います。

4061179969エントロピーとは何か―でたらめの効用
堀 淳一
講談社 1979-01

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