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金剛石のレンズ


4488538029金剛石のレンズ (創元推理文庫)
Fitz‐James O’Brien 大瀧 啓裕
東京創元社 2008-12

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 本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。

 19 世紀半ばの作家ということで、内容そのものはやや古めかしいところもあるものの、その時代だからこそともいえる描写の細かさ、色彩の鮮やかさ、流麗な文章が如何なく発揮されていて、なんとも素敵なファンタジーに仕上がっている。

 それでいて現代のわたしたちにとっても非常にしっくりとくる読み易さを与えてくれるのは、ひとえに訳者大瀧さんのなせる技といっていい。

 14 編の作品が収められているが、正直にいえばどれもこれというほどすごいアイデアというわけではない。ただ、その独特の世界を描写するその文章の秀逸なまでの美しさにこそ作品の真価があるような気がする。

 そんな意味で唯一腑に落ちなかったのは最後の「手から口へ」。いよいよどう展開するのかと思っていたら意外な禁じ手を使われてしまい、作者にしては妙だと思っていたら、解説に答えがでている。物語が広がりをみせ収拾がつかなくなってきたと判断した編集者が書いてしまったということらしいという。非常に残念。

 読み方によってはちょっとした社会風刺も含まれていて、単なるファンタジーに終わらないあたりもあらためて評価されるべき作家なのではないかと感じた。

 時代が古いということもあって読者を選ぶことは否定できないが、構えずに手にとってもらえばその文章のすばらしさに引き込まれることは間違いないかと。

 訳者による解説によれば、長年オブライエンの作品は特定困難などによりまとめることが難しい時代が続いたらしいのだが、ようやく編まれた作品群が決定版のような形で近年は残っているらしい。ただ、今回出版されたものにはそのおよそ半数あまりの代表的と思われるものを収めただけで、もう一冊分ほどは残っているらしい。出版事情のもろもろの影響もあるようだけれど、この貴重な作品群は英断を持ってここに刊行してもらいたいものだ。残すということも出版の大きな意義なのだから。


#旧本が好き!サイトのドメイン処理の不備により、意図しないリンク先となってしまうということで旧アドレスへのリンクを消去しています。(2012/02/12)

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