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掠奪都市の黄金


4488723020掠奪都市の黄金 (創元SF文庫 リ 1-2)
安野 玲
東京創元社 2007-12

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 本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。

 現物を手にしたときに感じた「ジュブナイルだろうか」という感想が最後まで残った作品。訳者あとがきをみるとそれはあながち間違いではないようだ。もともと児童文学作品のイラストを描いていたこともあるとか、シリーズの第4巻は英国二大児童文学大賞のひとつガーディアン賞を受賞したとか。日本ではこうしてSF文庫に収められているので児童文学というくくりではないけれど、読んでみるとその設定のゆるさとか、物語の展開とか全体の雰囲気がどことなく児童文学っぽい匂いに満ちている。いや、どこがといわれると難しいのではあるけれど。

 だからといってつまらなかったのかというと、反対で、実にわくわくさせてくれる展開に存分に楽しませてもらった。かつてスペースオペラをわくわくしながら読んだ時のように。

 主人公であるトムとヘスターがちょっとした行き違いから、別れわかれになり、さらにそれぞれの思惑が少しずつ崩れていく中で、いつしか物語が再びふたりに焦点を合わせていく過程はなかなか見事。まさにこのあたりの「いったいどうなるのか」と手に汗握るような思いは児童文学的な本領を発揮しているとでもいおうか。

 わけてもヘスターのキャラクターが実にいい。自身にコンプレックスを感じつつ、突っ走るようでいて相手へのやさしさも見せる姿がなんともいじらしい。対してトムのなんとふがいないことか。

 前作「移動都市」を読んでいないので、そもそもの移動都市という概念がいまひとつ不十分なのだが、大雑把なイメージとしてはラピュタ国が地上を移動しているといったところなのだろうか。都市が都市を淘汰していくという発想は移動するがゆえに面白い発想で、ただ、イメージとしてもうひとつ捉えにくいのは全体としての描写不足というのもあるのかもしれない。

 ま、それもこれもSFなのだ、児童文学なのだという割り切りをもって読めば、ひたすらに物語りの二転三転する展開を存分に楽しめるのは間違いのないところ。本作から読んでもことの経緯は概ねわかるので問題はないが、可能であれば「移動都市」から順に読むのがよいかもしれない。

 それにしてもどうしてこう海外の作品の人名や地名は長ったらしく、発音しにくい並びが多いのか。このあたりだけはどうにも不便な思いをするのだが、わたしだけだろうか。もっとも日本の作品だって妙な名前でふりがながないと読めないようなものがあったりするので、いずこも同じということなのかもしれないけれど。

4488723012移動都市 (創元SF文庫)
安野 玲
東京創元社 2006-09-30

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