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最高の銀行強盗のための47ヶ条


4488115020最高の銀行強盗のための47ヶ条 (創元推理文庫 M ク 14-1)
高澤 真弓
東京創元社 2008-09

by G-Tools

 本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。

 正直最初はカバーイラストでひいた。なんだかハーレクインでも思わせるようなイラスト。そこへきて「・・・のための47ヶ条」などというタイトルでは、なんだかいまひとつな感じが否めなかった。

 それでもまずまずよかったよという話をきいたので読んでみたら、結構いい感じに読ませてくれる。デビュー作ということもあって傑作かといわれたら、厳しい面はあるが、十分に楽しませてくれるという点においては満足できる。

 9 歳から父親の手伝いで銀行強盗を働き、唯一のおもちゃのバービー人形も強盗の段取りのためのアイテムでしかない。22 歳となって魅力的な美人になったが、仕事のときには男装しているので足がつかずに荒稼ぎ。父親はそんな彼女に仕事を覚えさせるために47の決まりを作ったのだが、どうも最近やたらと銃をぶっ放しては殺人を楽しんでいるような節が見えて、彼女にとってはなんとも腹立たしい。

 そんな折に下見をしたあとの合流場所のバーで彼女はマックスにひとめぼれ。悪ガキのマックスも彼女にひとめぼれ。といったあたりから物語りは大きく動き出して青春小説の様相が生まれる。

 銀行強盗の後に、父親をなぐりつけて全裸で置き去りにしてマックスのもとにやってきてふたりで逃避行。厳格なところのあるマックスの父親は町の保安官。ふたりは途中妙なコンビニ強盗を繰り返し、テレビでは虚実おりまぜられた報道で話題になるしまつ。それゆえに双方の父親の追っ手が迫る。さらに銀行強盗を捕まえるために FBI の無能だが金とコネはあるという捜査官らが追いかける。そこへさらに昔の強盗仲間がその機に乗じてあちこちに隠している稼ぎをネコババしようと動き出す。このあたりからが俄然面白い。

 逃げ回っていながら犯罪を繰り返すのでまた足がつく。追っ手は思惑の異なる多数。彼女の父親の執拗さと驚異的な体力。一方であまりにまぬけな捜査官。それらがいったいどう大団円を迎えるのかと思いつつ読ませてくれる。

 結末は概ねすっきりというところ。欲をいっても始まらない。とにかくどの人物もどこか変というかクレイジーなところがあって、それだけに展開の異様さが許される。それでいて収まるところにうまく収めたというところか。

 レナードはもっとしゃれたスマートな世界だが、それとは対極にあるといってもいいかもしれない。

 さて、いくつか気になった点。

(P.202)蜘蛛が足を這い上がろうとしているかのように、アクセルを踏み込んだ。

 原文ままなのだろうけれど、なんだか我々には意味不明だ。

(P.243)銃弾が頭蓋骨を貫き、車の窓ガラスも割、100 フィート先の岩のうえの蛇にあたったというのは、ちょっとやりすぎではないのか? まあ小説だからいいけど。

(P.325)モーテルの端の壁龕(へきがん)にいるのを見つけた。

 残念ながら広辞苑にも漢字源にもこの言葉がない。造語か? と思ったがネットの辞書サービスで調べると大辞林にあった。(「龕」だけなら割と載っているが)

龕(がん)

「岸壁や仏塔の下に彫りこんだむろ、中に仏像や宝物を納める。中に仏像を入れる厨子」(広辞苑)

壁龕(へきがん)

西洋建築で、壁・柱の垂直面につくったくぼみ。彫刻などを飾る。ニッチ。
大辞林 第二版より

 なんとなくわかったが、niche で英和辞書を調べると手元のデイリーコンサイスですらでているので、むしろこちらの「ニッチ」という表現のほうがまだよかったのではないか。ただそれでも意味が見えにくいので注釈をつけるとか、あるいはもっとわかりやすいくだけた表現にかえてもよかったのではないか。あえてこの言葉を使う意味はあったのだろうか、と思わざるを得ない。

 また最後にでてくるナバホ族の少年と FBI とのくだりは余分な気がする。”走るくま”という彼の名前も直訳してしまってはちょっと違うような気がするが。歌手のカーペンターズはあくまでもカーペンターズと誰しも呼ぶはず。大工、などという言い方は決してしないのと同じことで。

 ちなみに、作中にいくつも決まりが出てくるのだが、残念ながらすべてでてくるわけではない。第なん条なになにといったように書かれた部分が多数でてくるので、あるいは全部そうして出すのかと思ったが、途中まででその勢いは止まり、後半はほとんどなくなってしまう。47 のうち 15 個については登場しない。

 また、時々文字が太字になる部分があるのだが、どうにもこれは重要なんだという雰囲気も感じないし、あまりに多様されていてかえって目障りだった。これもまた原文がこうなのだと思うが、あまり効果的な使い方とは思えないのだが、原文での編集者は何も言わなかったのだろうか。

 と、気になった点もあるものの、中盤以降これでもかと畳み掛けるような展開にぐいぐい引っ張ってくれるのは間違いない。


#旧本が好き!サイトのドメイン処理の不備により、意図しないリンク先となってしまうということで旧アドレスへのリンクを消去しています。(2012/02/12)

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