完全脱獄
![]() | 完全脱獄 (ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 30-4) ジャック・フィニイ 宇野輝雄 早川書房 2007-09-26 by G-Tools |
フィニイといえば「ゲイルズバーグの春を愛す」あたりばかりが存在を示しているが、本来は「レベル3」であるとか「五人対賭博場」とかのミステリ系の作品にこそ、その真骨頂があるというのは古くからいわれていること。といいながらも、なぜかそれらの書籍は絶版であったりすることが多くて、この頃になってようやく「レベル3」が新装なったりしたところ。
新刊案内で見つけたのでようやくにして(そして今買わなければ、おそらくまた数十年入手は不可の状態になるであろうことは想像に難くないので)購入したら、「盗まれた街」が4度目の映画化になって「インベージョン」というタイトルで公開されるのだとか(明日 10/20 かららしい)。インベージョンかあ。まあ、そういう話ではあるな。といっても昔のことなので細かなことはもう覚えていない。それでも舞台はそんな都会ではなかっただろうなとは思った。もちろん、映画と原作は常に別物だ。それでも「盗まれた街」というのは実にいいタイトルだと思うのだけれどねえ。
ところで「完全脱獄」。脱獄の手段に関しては、そんなに簡単でいいのか? と思わないではない。それなりに周到ではあるし、突飛もない発想である部分もある。とはいえ、これまでによく見てきた脱走を扱った映画などのそれに比べるとややあっさりという印象はある。そんなに簡単に忍び込めるのならば、なにもそこまで面倒をしなくても、と思ってしまうくらいに。現実のその刑務所において可能であるのかどうかはわからないので、ともかくそういうものだと思って読むしかない。それは書かれた年代がもはや過去のものだということもなくはないか。
とはいえ、本書の醍醐味は実のところそうした脱獄の手順ではなくて、最後のさいごに仕掛けられたどんでん返しにある。だからできるだけ素直に物語を楽しめばいい。
かつてフィニイの作品の復刊がさかんになされた時期があったが、いままた絶版となり、映画化をうけていくらかは復刊の兆しもあるようだが、完全復刊というのはさてどうなのだろう。未入手のものについては今のうちに手に入れておくべきだな。
盗まれた街 (ハヤカワ文庫 SF フ 2-2)
ジャック・フィニイ 福島 正実
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