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ぬしさまへ


4101461228ぬしさまへ
畠中 恵
新潮社 2005-11-26

by G-Tools

 なんとも心地よく読ませてくれる文章のうまさ、しっかりとした構成。江戸を舞台にして妖怪まで出てくるおとぎ話のような印象は、すぐに打ち消されてしまう。一応謎解きがあるとはいえ、それは前作の「しゃばけ」を書くための方便のひとつだったともいえるかもしれない。いや、謎解きがつまらないというのではなくて、時代を背景とすれば今のような科学捜査ができるわけでもなく、妙に凝ったアリバイ工作や犯行手口(というほど大仰な事件はないのだけれど)はそもそもでてこない。だからこそ妖怪という存在がうまく機能している。

 文章のうまさの理由は、著者の略歴を見ると歴然。都築道夫の小説講座に通っていたのだとか。いや、通っていたら誰でもうまいというわけではむろんないから、素質と努力の賜物なのだろうけれど、すいすいと読ませてくれて、ついついページをめくっていってしまううまさがある。

 全体に貫かれているのはミステリ的な要素よりも、人情話といったもので、時にせつなく胸をうつ。「空のビードロ」「仁吉の思い人」「四布の布団(よののふとん)」「虹を見し事」など、貧しさは無論だけれど、裕福であるが故の苦労や不幸といったものも忍ばせていて、どれも何度となく読み返したくなる。

 それだけであったなら、切ない話であったりというだけで終わってしまうが、そこに妖怪を置くことで滑稽さや明るさを持たせている。重いばかりになっていない所以だろうか。

 続編の文庫化が待ち遠しいというのも久しぶり。

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