博士の愛した数式
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ベストセラーとかなんとか大賞受賞などというと、とたんに興味がそがれてしまう天邪鬼なわたしなのだけれど、この本だけはハードカバーの時に買おうかと思って手にとったことがある。恥ずかしながら値段におじけて買うには至らなかったのだが(べらぼうな値段ということではなかったのだけれど(^^;)、以来読みたい本として常に頭の片隅にはあった。映画化の話はまったく知らずにいて、今回文庫になったということで、それならと今度はすぐに購入して読んだ。80 分しか記憶がもたない数学者という設定はやや突飛な印象もあったが、そんな違和感などはすぐに消えて一気に読んでしまった。
誰でも初対面の相手と話すときは、話のきっかけをどうもっていこうかと思うもので(もちろんそういう抵抗のない人というのも存在するけれど)、博士にとってはそれが数学であった。博士のすばらしいところは、決してこむずかしい数学の理論などを持ち出すのではなくごく些細な数にまつわる不思議や面白さを、やさしく語ることができること。とかく学者や専門家は優しいことまでも難しく語ってしまう傾向があるもの。物語のなかで語られるいくつかの数の話にしても、ごく普通に手で計算して確かめることができるものが多い。そうして、試してみるとなるほどと、その不思議な性質をあらたな発見のように感じられる。
そうかと思うと博士は子どもにたいしてだけは異常なほどの愛情で接する。子どもをとても大切にする。けれど、博士の記憶は 80 分でまたリセットされてしまう。
同じことの繰り返しのなかから、ほんの少しづつあらたな歴史が作られていく繰り返し。すべてが無駄に見える繰り返し。それでも続けられる繰り返し。繰り返されなくてはならない繰り返し。博士と家政婦親子との日々が淡々とつづられる。そんな繰り返しがなんと素敵で大切なのかと、ふと思いいたらされる。第一回本屋大賞受賞もむべなるかな。
博士が愛した数式。それは、オイラーの公式。偶然というものなのか、昨年になってようやく入手し読み始めている「オイラーの贈物―人類の至宝eiπ=-1を学ぶ」は、そのオイラーの公式を理解するための独習書として著されたもの。わたしのような一般人にとっては理解するまで読み進めるのは容易なことではないけれど、順を追って読み進めればある程度は理解できるかもしれない。興味をもたれた方は手にとられてはどうだろう。
映画のできもなかなかよいようで、見てみたい気持ちもあるのだが、昨今の出不精からするとテレビ放映かレンタル待ちということになるかもしれない。
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