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タレント推薦本の憂鬱

 [ webマガジン~ポプラビーチ「書店日記」第 34 回:書店員の憂鬱 ]

 重松清さんの「その日のまえに」をめぐる顛末に思わずかつてのことを思い出す。タレント推薦本というやつ。田口さんはエンデの「モモ」を引き合いにだされているが、確かにこれもこまりもの。なにしろ岩波である。返品がきかない。しかも箱入りのそれなりの値段。客注で取るならまだよいが、どーんと仕入れて平積みなんてなかなか勇気がでない。

 わたしが記憶しているのは、どなたの推薦だったかは定かに覚えていないけれど、ダニエル・キイスの「アルジャーノンに花束を」と、ジェームズ・ティプトリー・Jrの「たったひとつの冴えたやりかた」あたりか。どちらもグループ歌手のどなたかだったかと記憶はしているのだが。

 ある日突然「アルジャーノン」が売れ出した。しかも若い女の子が買っていく。早川のハードカバーをだ。どう見ても SF ファンとは思えない。結局アルバムのタイトルに使ったとかなんだかんだをようやく知ったが、なんとなくその後のキイスブームの走りだったといえなくはない。

 SF 好きのわたしとしては、既に読んでいるし好きな作品ではあるものの、なんだかそのブームには違和感があったのは確か。

 ティプトリーなどは、まだ「愛はさだめ、さだめは死」なんかでなくてよかったのだろうが、作品としたらはるかに「愛は・・・」のほうが優れていると個人的には思う。「たった・・・」が売れてしまった背景には、カバーをはじめイラストを川原由美子(だったかな?)が描いていたということと、なんとなくシチュエーションが女の子受けしそうなものだったからだろうか。もっとも「たった・・・」は連作なので、コーティ(?)だったが出てくるのは最初の表題作だけで、全体としてはきっと彼女たちにはつまらない作品でしかなかったと思う。方程式ものとしてもあまりにお粗末な気がしてわたしはあまり好きではない作品だし。(彼女たちは「接続された女」なんて絶対に読まないだろうし)

 そんなふうにある日突然予想もしない売れ方をする本というのは恐ろしい。

 タレント推薦というわけではないものの、「窓ぎわのトットちゃん」の時の売れ方もいまだに信じられないような売れ方だった。200、300 冊という入荷がたちどころに消えていく。類似のものでは「愛される理由」。こちらも驚き。なかなか仕入れも厳しかったのだが、こちらはそれなりのルートというのもあって、なかなかに面白かった。

 とにもかくにも書店にとってメディアで紹介される書籍情報というのは、うれしいやら哀しいやら。まあ、もっとも効率的な宣伝活動ともいえるわけではありますが。

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