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You've Got Murder


0425189457You'Ve Got Murder
Donna Andrews

Prime Crime 2003-04-01
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 「恋するA・I探偵」読んでいて、いくつか気になってしまったことがあったので、原書を購入してみた。

 ネットであれこれと調べてみて、ある程度理由を推測できた部分もあるけれど、それでもちょっと不思議という部分もある。現状で気になっていることと、わかったことをあげてみる。

 なお、翻訳は「恋するA・I探偵」2005 年 8 月 15 日早川書房発行で、島村浩子さん訳を、原書は「You've Got Murder」2003 年 4 月発行の Berkley Prime Crime mass-market edition を使用。




1 ページ 10 行目
あの三人が問題になるとは思えない。三人はプログラマーで、デバッグをしているか、プログラム言語を翻訳をしているか、あるいはプログラマーが午前三時まで寝ずにやるような仕事をやっているのだろう。 (略) あの三人はあそこから動きそうにない。

  1. 「プログラム言語を翻訳している」という書き方は一般的には誤解を与えないか? すなわち「英語で書かれたプログラム言語を仏語に翻訳している」という風に。
  2. 「翻訳」がコンパイル作業という意味であれば、「あそこから動きそうにない」という判断は必ずしもあたらないのではないか。


 原文はこう、

1 ページ 15 行目

He didn't think the three of them would pose a problem. Programmers,debugging or compiling or whatever it was programmers stayed up till 3 A.M. doing. (略) They looked as if they'd stay put.

 コンパイル作業をしているという意味らしい。確かにソースファイルを機械語に翻訳する(させる)作業なので、間違っているとまではいえないものの、やや一般には誤解をまねきそうなので、「コンパイルしているか」でもよいかもしれない。だいたい「デバッグしているか」となっているのだし。デバッグってなに? な人も少なからずいると思うし、なんだか分からないがコンピュータに関わる作業なのだろう、と思わせたらそれでよいのではないかともいえる。

 席を離れない、ということの理由としては、「デバッグしたり、コンパイルしたり」していることは、やや不自然なところもあるかもしれない。どんなことにせよ、熱中しているときには時間を忘れて作業するものではあるが、小さなプログラムであれば、開発そのものもさほど時間をとられるわけもなく、逆に巨大なものであれば、ひとたびコンパイルにかけたらしばらくは手があく、という感じもあるのだが。そうすればちょっと休憩するか、という動きはあっても不思議ではない。


28 ページ 5 行目
「プログラマーふたりが話してたんだけどさ、別のある男が暗号化(コーディング)の仕事にすっかり熱中しきってるんで、その男はきっとチューリング・テストに落ちるだろうっていうんだよ。それはどういう意味かなと思ったんだ。ふたりはそれをすごくおもしろい冗談だと考えてるみたいだったけど」
  1. 「暗号化」というのは適切なのだろうか?
  2. どのような冗談なのかよくわからない。


原文はこう、

16 ページ 25 行目

"I overheard two programmers saying that some other guy was so into a coding project he'd probably flunk a Turing test. I wondered what that meant. They seemed to think it was really funny."

 アラン・チューリングが暗号機械エニグマの解読のために、まったく同じ動作をする機械をつくりあげ、暗号解読をしたという過去から、暗号化うんぬんという冗談が出来ているのだろうとはおもうが、具体的にどう冗談として成立しているのかはよく分からない。

 その後アメリカにわたって人口知能の研究を行い、チューリング・テストを考案したということで考えてみると、暗号化にばかり熱中していてその次の段階に進まないようでは、テストに合格できないということか? coding に「暗号化」「符号化」との意味があることから、プログラムつくりに熱中している人間を揶揄しての冗談ということだろうか?

 そうした意味合いがあるのであれば、「コーディング」とせずに「暗号化(コーディング)」と訳したのは適切なのかもしれない。

参考:
 [ ちえの和WEBページ:コンピュータ偉人伝:アラン・チューリング ]


139 ページ 11 行目
キング・フィッシャー:
キング側のビショップを QR4 に・・・こう。次にポーンでポーンを取る。それから、いいかい、チューリング。ルークを QB2 に動かすんだってさ!
わたし:
(数ナノセカンドの間を置いてから)やれやれ、本当に古典的な手ね、キング・フィッシャー。アハハハ!(≧▽≦)
キング・フィッシャー:
違うよ、チューリング、ぼくの話をちゃんと聴いてなかったんだろう。彼はルークを QB2 に動かしたんだよ! 信じられるかい???


  1. チェスの棋譜の書き方がおかしくはないか?


原文はこう、

98 ページ 7 行目

KingFischer:
KB to QR 4...see. Then Pawn x Pawn. Now get this, Turing: Rook to QB2!

Me:
[After a pause of several nanoseconds] Gee, that's really classic, KF. ROTFLOL.

KingFischer:
No, Turing, you're not listening: he played Rook to QB2! Can you believe it???

 チェスの棋譜の記法は、原則として駒の記号に続けて移動先を示すもの。ただし、同じ種類の駒が同じ場所に移動可能である場合には、どの駒が移動するのかが分かるように記法が決められている。

 たとえば、ルークが移動する時の記法はこう、

  • Rc3 (ルーク(R)を c3 に)

 盤上の位置の示し方は、左下を基点として、横方向は a から h 、縦方向は 1 から 8 、となる。原文にあるような「 QR4 」だとか「 QB2 」という位置は存在しない。仮にそれを、「クィーンのいる R4 」のように解釈すればまだよいかとも思うが、「 r 」という位置は存在しないのでこれもダメ。

 ちなみに駒は、K(キング)、Q(クィーン)、N(ナイト)、R(ルーク)、B(ビショップ)、そして P(ポーン)である。ポーンだけは例外的に P を記入しないという。

 また、駒は大文字で、盤上の位置のアルファベットは小文字でというのがルール。

 こうした記法が国によって異なるという可能性もなくはないが、FIDE のサイトにあるルールでも上記のとおりであるようなので、よほどのローカルルールということになりそうだ。とすると、仮にもネット上でのサービスでチェスの名人となる A.I なのだから、国際的なルールに則って処理するのが本来ではないだろうか、と。

 ただ、チェスに詳しいわけではないので、誤解していることや知らないことがあるのかもしれない。

参考:
 [ FIDE Online. FIDE Handbook: Chess rules ] (英文)
 [ 棋譜 - Wikipedia ]




83 ページ 3 行目
「ザックのパソコンからログインしてちょうだい。 (略) 彼はザックのeメールアイコンをさがしてプログラムをスタートさせ、<UL>のシステムに接続されるのを足で床を叩きながら待った。

  1. ULのシステムにログインするためにメーラーを起動して接続というのは、ちょっと変ではないか?


原文はこう、

57 ページ 8 行目

"You can log in from his machine; that will look perfectly normal."  (略) He poked around until he found Zack's e-mail icon, started the program, and waited, tapping his foot, while it connected with the UL system.

 A.I.チューリングが行おうとしているのは、ザックのパソコンへの侵入で、それから何かのヒントがないかと思っている。メーラーで繋いだからといってそんなことができるのだろうか? それともそれによってザックのパソコンの IP を割り出して、ログインしようという考えだった? 単純にメーラーでリモートアクセスという意味で書かれたのならちょっと違和感がありそうな気がする。

 とはいえ、わたしもそのあたりに関しては素人なので断定的なことはいえない。ただ、それでもちょっとなじめない。

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