マニュアル
以前の仕事で作業のマニュアル(というほど大仰なものではないけれど)を作りました。現業でしたのでイレギュラーな作業をしなければならない場合の注意であるとか、現状行っている効率のよいと思われる作業方法、ものによっては特殊な事務処理の手順などについてをまとめてみたのでした。(なんだか大仰な雰囲気はするなあ)
もともとは自分で一応形を残しておこうかと始めたのですが、そのうちに全員に対して作成するようにというお達しがでました。となると一応漠然とながらも締め切りなどというものが設定され、それまで自分のペースで休み時間や休日を使ってデータの作成など準備してきたというのにまたぞろ時間がなくなるのかあ、と嫌な予感を覚えたものでした。
個別の作業に関わるその時点での作業時間や人数などを調べ上げ一覧表にすることは、その後担当者が変わったときに仕事の目安をつけるという点で有効でしたから、過去のデータを整理して現状としてのおよその数値をだします。
さらに現業であるということは、機械的な作業などもあるわけでそうした作業の仕方であるとか、機械類の操作・日常的なメンテナンスなども知っていなければならないし、知っていれば役立つことも多いです。しかしこうしたことは文字で書かれていてもなかなか理解は難しい。伝えることも同様です。なんとか動画にしたい。と思ってはいましたが、さすがにデジタルビデオカメラなどは高価です。デジタルカメラの動画機能もありますが当時は時間の長さであるとか、いずれにしても購入しなければならない。
幸いにしておもちゃのようなウェブカメラもどきを入手して試してみると、困らない程度の映りではあるのでこれを使うことにしました。(他にあまり活用の場もないので)決して安いとは云えないにしても、きちんとしたものを購入するのに比べたらはるかに安いのでまあよしとしようというところです。
動画以外にも様々な写真を用意し、動画を撮り難いものについては静止画で順を追って解説するなどした HTML にしあげました。商品はもちろんのこと資材や作業内容の全般について必要な事柄を PC で確認できるように。残念ながら現場には PC がありませんでしたが、担当者があらかじめ学習したり、新人さんの全般的な研修的にも使えるように心がけたものでした。
しかしこうした作業は時間がかかります。それまでにも簡単なものは作ったことがありましたが、今回は少々大きなものなのでそれらのリンクや画像の切り出し・補正、画面の確認・修正などをしているだけでも休日はもちろん、平日の深夜にまで作業したものです。
一方で上からは「いつ出来るの?」ということで、見通しを話したり、作成途中の画面を見せてこういうものなので少し時間はかかるけれどと説明はするものの、それにどのような時間が必要なのかということが彼らには理解できていないのだから、結局「で、いつ出来るの?」に終始してしまう。
出来上がった HTML を納品(提出という感じではなかったな(^^;)するには CD にする必要があったので、CD 作成のための PC を新調。それまでは 486DX2 で Win95 マシンだったのだから。とはいえ、それは CD を焼ける環境が揃ったというだけで、作成するのは初めてのこと。添付のソフトは使い方が分かるような分からないような代物。結局なんだかんだと失敗を重ね、ようやくいいかなと思うとリンクがおかしい。ありがちな失敗だがリンク先が C ドライブになっている。何度となくテストはしているが同じマシン内であるから問題なく見えてしまう。時間は深夜になって回転も鈍くなる。当然昼は昼で忙しくお仕事である。
そんなこんなでなんとか約束の期日に少し遅れたくらいで完成し、手渡すとヒョイと棚の上に置かれた。そして再びそれに手が伸ばされたのはひと月後のことだった。わたしはいったい何のために深夜まで無給で作業をしていたのだろう。忙しい時期であったのは理解できる。とはいえ全体をザッと見るくらいのことはするべきだったろうなあ、とわたしがその立場であったら。
そうしてその後半年くらい更に期間を待ってほぼ全員のマニュアルが提出された。当初の目的は「誰がその仕事をすることになっても困らないように。」というものだった。しかし、その後そのマニュアルが使われることはおろか、目に触れることすらない。目的は作成することにあったのだ。使うことにではない。
虚しさを覚えるのはもちろんだ。とはいえ、どうせこの会社は使えないだろうなあ、という諦めも感じていた。その CD には多くの有用な情報が詰まっている(自信過剰かもしれないが)。今、段取りが取れなくてあたふたしている。ちょっとそれを見れば、答えは示されている。マニュアル通りにしか動けない人材は大局的には使えないかもしれないが、マニュアルが必要ないわけではない。逆にマニュアル通りに動く人材はある人々には非常に使いやすいかもしれない。そのような場合にはむしろマニュアルは邪魔なだけかもしれない(ある人々こそがマニュアルであるから)。
どのように自明のことであっても自らが体験するよりないこと、というのは間違いなく存在する。過去の経験や例から結果がわかりきっていることでも。そこで大切なのは既に例示されている事柄と自分が未経験なりに考えていることの双方を経験してみて、自らが結論を出すことかもしれない。
でも、せっかくあるんだから、やっぱり使って欲しいですね・・・
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