山猫の夏

 船戸与一再読の二冊目(といっても多分手持ちはこれで終わりかもしれない)。文庫で 710 ページあまりという大部。すっかり内容など忘れているのでその分厚さに正直ひるみながらも手にしたら、あれよあれよと読んでしまった。面白い。

 ブラジルの架空の町エクルウを舞台にして山猫と呼ばれる日本人が、町を戦乱に巻き込み、長年続いていた歪んだ町の実相を根底から変えてしまおうとするかのような活躍が描かれる。ふたつの荘園家が支配するエクルウ。いがみ合う両家は度々死者を出す抗争を繰り返している。小さな山間の町ということもあり町の住民もいつしかそれぞれにつくような形にならざるを得ず、それぞれの家に出入りする商売がそれぞれに存在する(それぞれだけに商売する肉屋がひとつずつあるなど)というような特殊な様相を呈している。

 警察はそうした抗争を見逃すことの見返りに両家から賄賂を手にし、駐屯する軍隊(といってもごくごく小規模なもの)は両家に武器を横流しすることで私腹を肥やしている。とはいえ事が大きくなりすぎればさすがに警察にしても無視もできないため、両家はある程度のところで矛を収めることで、町の支配権を維持しているのだった。

 そこへ現れたのが山猫と名乗る日本人。胡散臭い感じなのだが、両家のひとつビーステルフェルト家に依頼されてやってきたのだった。とある男と駆け落ちした娘カロリーナの行方を捜索するために。実は駆け落ちの相手は敵対するアンドラーデ家の息子フェルナン。こともあろうに禁断の恋に落ちたふたりが両家を敵に回して逃げ出してしまい、両家は当然それを許せるはずもなくそれぞれに捜索隊を派遣するのだった。

 とはいえそれによってそれぞれの家の兵隊を減らしてしまい抗争的バランスを崩すことをよしとしないので、すべてあらたに雇った人間ばかりで構成された捜索隊を両家は派遣。当然寄せ集めともなれば、統率などなかなか望めるはずもなく、山猫を快く思わない輩がチャンスをうかがうのだった。

 前半はその追走劇。抜群の推理で駆け落ちしたふたりの行き先を判断し、近道して追いつこうとする山猫の一行。見事にそれはあたったが、予期せぬ事態は起こるものでアンドラーデ家のフェルナンは途中であった盗賊によって殺害されていた。カロリーナは盗賊らによって陵辱されすっかり正気を失ってしまっている。

 山猫は盗賊一味を倒してカロリーナを救出し、彼らが鉱山町から奪った鉱石なども返してやる。そうして帰途につくのだが、ここで登場するのがアンドラーデ家の捜索隊。そのリーダーがかねて山猫を追っていたいわくつきの男で今は用心棒に身をやつしたとはいえ凄腕のサーハン・バブーフ。双方の知力を駆使した総力戦が繰り広げられてどちらも大半の仲間を失うなか、舞台はエクルウに戻る。

 山猫が狙うは両家の財産の半分ずつを分捕ること。実質両家はもはや弱体化しつつあることを思えばそれによってエクルウの町の勢力分布はまったく崩れるような状況になる。同時に、警察や軍隊にも手を向け賄賂におぼれる指揮者の排除も目指す。山猫がなぜそこまでするのかはわからない。

 警察と軍は共謀して両家に攻撃を開始。とうとう非常事態がはじまる。両家のいがみ合いは最高潮に達し、今となっては住民同士ですら殺し合いが起きてしまう状況。この事態を収めるために山猫は両家に連絡してついに財産の半分を譲渡するという正式な文書の調印にこぎつけようとする。

 エクルウの町で繰り広げられる終盤の 200 ページあまりの展開はめまぐるしいものもあって手に汗握る暇もないくらい。はたして山猫のの野望は実現するのか、そしてなぜここまでしたのかといったあたりが最後には明かされるわけだが、それはまあ読んでのお楽しみにするほうがいい。

 物語の語り部でもあり、山猫によって事件の一部始終に巻き込まれることになる”おれ”がいかにして変貌していくのかといったあたりも実に面白い。まさに船戸与一絶頂期のはじまりという頃の作品で、一気読み必死。

4094060707山猫の夏 (小学館文庫)
船戸 与一
小学館 2014-08-05

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 持っているのはこっちなのだが、今は小学館になってしまっているらしい。

B00F2H353U山猫の夏 【新装版】 南米3部 (講談社文庫)
船戸与一
講談社 1995-11-15

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ザップニュース集計(2013/7 - 2015/8)

 韓国を突き放しにかかるフランス。そのフランスの猛追をも相手にしないアメリカの独走はさらに飛躍的に。

世界のニュースザッピング 2013/07-2015/8
国名など回数
アメリカ380
フランス225
韓国198
イギリス158
中国128
アルジャジーラ127
オーストラリア122
ドイツ22
スペイン20
ロシア18
フィリピン17
インド13
ベトナム12
タイ11
香港7
シンガポール7
ブラジル5
インドネシア3
トルコ3


ザップニュース上位グラフ


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年表ドラマでは面白くない

 NHK で「経世済民の男」のドラマシリーズ「高橋是清」を前後編で見る。前編はまあそれなりという感じで見て、なるほどなかなか不思議な人であるなあ、などと思いつつみていた。ところが後編になると少し印象が変わってきて、どうにもダイジェストの色が濃くなってしまった。おおざっぱにいってしまうとテロップで「○○に就任」とかだしておいて、それにまつわるエピソードをひとつあたり演じると次に移る。という具合。さながら年表をただ見せられているかのようだった。

 確かに個々のエピソードもなかなか興味深いものだったり、面白いものだったりはするのだけれど、本当に断片を小さな断片を入れ替え入れ替え見せられているだけという状況は、今ひとつドラマとしての面白みを失わせるに充分だったとしかいいようがない。

 あくまでも史実を元にしたフィクションとしてということでもあればなおのこと。もっと特定に時期に絞ってしまったほうがよかったのではないかとは。たかだか二時間弱という時間で 80 いくつまでの一生を描こうとするほうが無理すぎる。いっそ大河ドラマ枠できちんとやったほうがよいのではないかという意見は至極全うではないかと。

 こうなってしまうと続くふたり分のドラマに対する期待が、やや不安になってしまったりもする。これが放送 90 年記念ドラマというにはいささかお粗末と思えてしまう。残念。

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雨上がりの初秋

赤とんぼが群れ飛ぶ田園


 昨夜から午前までみっちりと降った雨。どんよりとした天気が続いてもう秋霖なのかと思うような天候で、どうなることかと思ったら、午後にはふっと晴れ間が広がったりして日差しがさしこむと時期はずれの蒸し暑さがムッとやってくるという。

 そんななかでも赤とんぼなどが群れて飛んでいたりするのを見かけて撮影したものの、どうにもとらえきれない。

 このまま秋になるわけではなさそうだ、との話もあるものの、はてさてどうなることやらというこのごろの陽気ではある。

 ホッと一息、初秋の夕暮れ。

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蚊のいない夏

 この梅雨から夏にかけての天候もいくらか珍しい感があったけれど、それとも連動するのか「蚊」もまたすくなかった。網戸の扱いや玄関の出入りなど気をつけているというのはもちろんあるのだけれど、それにしてもこの夏は蚊の羽音をまったくといっていいほど聞いていない。少なくとも室内においては。おかげで、刺されることもなかった。

 外の草取りのときなどには、たまにまとわりつく羽虫があったので、なかには蚊もいたかと思うのだけれど、気をつけているとはいえ例年一度や二度はどうしても被害にあってしまうものなのに、この夏はほんとうになかった。これもまた珍しい。

 考えてみると極端に暑い日が続いたということとか、雨もあったが、たまり水になるようなことがなくすぐに干上がってしまったというようなことも影響していたのだろうか。世間的にどうだったかはよくわからないが(ラジオなど聴いていると蚊に刺されたという話も出てはいたのでまったくということでもない)、少なくともこのあたりにおいては比較的発生が少なかったのではなかろうかとも。

 同様にコバエの発生もほとんどなかった。これまた今年は特に危険なゴミについては冷凍する措置をしていたのでそのあたりも影響したのかもしれないとは思う。昨年などはゴミ袋のなかなどにまとまって発生してしまい、急遽殺虫剤を用意したようなことも。今年は先日数匹をそれでも見かけたが、さほどのことにはならかなった。

 我が家で少ないだけならばたまたま対処がよかったからかと思ったりするのだが、例年大量に発生している実家においてそれがなかったというのがそもそもの発生が少なかったのであろうという理由でもある。そのあたりはやはり気候の影響なのだろうか。

 もっともここへきて涼しくなったので、むしろ今になってという傾向がないではない。また、こおろぎは相変わらず例年のごとく鳴いている。ほかの羽虫はやっぱり柱を作っていたりもする。

 なかなか生物のこうした状況を明確に説明できるモデルというのはないのだろうけれど、それだけに面白いともいえるのかもしれない。なんにせよ少ないと生活のうえでは快適でありがたい。

 いや、考えてみると先日数年ぶりに室内にゲジゲジが乱入してしまったことを思うと、別の意味で問題があるともいえそうではある。ということで、一時切らしていた虫コロリアースを補充したのだった。予防重要。

B000FQMM5Kアース製薬 虫コロリアース(粉剤) 550g
アース製薬 2004-06-29

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