ホタルの歌


4896422104ホタルの歌
原田 一美
未知谷 2008-01

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 本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。

 おそらくかれこれ 20 年あまり前から、全国的にあちこちでホタルの保護活動であるとか、ホタルを呼び戻すための運動といったものが盛んになっていたような記憶がある。もちろん場所によってはもっと以前からそうした活動はあったのだろうとも思うし、現に本書の活動などはおよそ 40 年ほど前のことだ。

 なぜホタルを保護しようとか、復活させようとするのかということを考えるときに、なんとなく昔への郷愁というイメージも強いけれど、ホタルの生息域の条件というものが現代社会に訴えるものをこそ主体的に考えるべきなのかもしれない。

 水の流れが清くなければならないこと、一生の間に水中、地中、地上と生活の場を移すということ、(少なくともゲンジボタルの場合)餌は基本的にカワニナという貝であること。

 どんなにきれいな流れがあってもコンクリートの護岸工事がされていたら、卵を産み付けることも、孵化のために地中にはいることも困難になるため、生息域としては適切ではなくなってしまう。

 たとえ川周辺の土地の条件がよくても、カワニナが生息していないのではホタルは生きることができない。

 ひいてはわたしたち自身が生活する環境のありかたそのものについても、思いをめぐらすきっかけとなるともいえるか。

 とにかく守っていこう、というだけではなく、そのためにはまずホタルのことをきちんと知ろうという姿勢がすばらしい。なにもわからない中で子供も先生も手探りで研究をはじめる。そうして地道に調べるうちに数多くのことを学び、そして失敗も経験する。そんな成長の過程がわかりやすく、楽しく、的確に綴られていく。

 子供たちはもちろんのこと、先生も、そして親もまたそれに引っ張られるようにしてなにかを得ていく。昨今、教育の現場で多くの問題が取りざたされるなか、学ぶということの、教えるということの根源的な本質というのはこういうところにあるのではなかろうか、とも思える。

 もちろん、昨今の教育現場における諸問題は一筋縄ではいかないことが多いようには思うし、それは、教師だけに責任を転嫁してよいものではないはず。

 ただ、このホタル研究の過程というのはあるべきひとつの形には違いないと思う。ことは理科に限らず、他の科目においても同様な姿というものがあるのだと思うし、それは必ずしも同じであるとは限らない。けれど自ら学ぼうとしていく姿勢というのは共通するものなのではないかなと。

「もうこれからは、本に書いてあるからといって、うのみには信用すまい。まず、ほんとうかなとうたがってみることだ」と心の底から思いました。

 ホタルの卵は白い泡の中にあると、本に書かれていたのに、実際は別の虫だったとわかったときの原田先生の思いは、どのような学習の場においてもいえることなのでは。なんでもかんでも信用しない、というのではなく、本に書いてあるからといって、ただただうのみには信用しないというところが大切なのでは。

 まず疑ってみたうえで確認してみるという行為が、科学的な見方というところでは。

 たとえばベテランが新人になにかを教えていて、ある方法ではうまくいかないことが経験的にわかっているので、違う方法を教え、そうするように言ったとする。人によってはそのまま教えられた方法を行うかもしれないが、別の方法でもよいのではないかと自分の考えで行う人もあるのは、よくあること。

 結果的にやはりうまくいかなかったり、仮にできても時間がかかったり。しかし、少なくともそうして覚えたことは忘れないということはある。なぜそうしてはいけないのか、そうしないほうがよいのかということまで含めて忘れないというのは知識の伝達という意味においてもあるいは必要なことなのかもしれない。

 確かにそんなやりかたをしていると、無駄に時間ばかりとられてしまうという指摘もあるはず。とはいえ、そういう姿勢こそが科学であり、学ぶということなのかもしれない。ことに子供時代の学びという観点においては、多少の時間の無駄よりもよほど得るものが大きいといえるかも。大人のばあいはもちろん、時によりけりというものだろうけれど。

 「新版へのあとがき」では、こんなことを書かれている。

今から思えば研究とは名ばかりの、幼稚で粗末な観察日記に過ぎなかったかもしれない。

 研究の過程で卵や幼虫を死なせてしまったりということもあったけれど、それもまたホタルについてきちんと知るための過程であり、たとえ自然界にあったとしてもそうして死んでしまっていく命は数多くあるのだということもまた知りうることとなる。

 どのような研究でも、一見つまらないことかもしれないことの積み重ねが意外な発見につながっていくというものでは。

 生きた動物とのふれあいで、命の尊さを学ぶことができると言ったニュースがあったのだが、命の尊さを知ることができるのは、残念ながら「死」と直面するしかないのではなかろうか。それが小さな虫であれ、大きな動物であれ、大切に接してきた相手が死んでしまったということに直面してこそ、命というのは限りがあり、失われてしまえば元に戻すことはもうできないものなのだと身をもって知ることになる。元気な姿と触れ合ったからといって命の尊さが分かるものではないのではなかろうか。

 身近な家族の死というものが、遠い存在になってしまった現代にあって、ペットなどの動物の死というものがその意味では唯一身近なものの死を知るきっかけでもある。(それだけに「ぶたばあちゃん」での最後の描き方はなんとももったいないもので、一番大事な部分を放棄してしまったような印象を持たざるを得なかったわけだ)

 「ホタルの歌」というタイトルを見たときに、どうにも記憶にあるような気がしていたのだが、1971 年に学習研究社から刊行されたものの、残念ながら 1998 年に絶版になってしまったのだと分かった。写真といいつくりといい、なにやら覚えがあるような感じだと思った(いや、読んではいないと思うのだけれど、この手のものはよく知っていたので)。

 学研や誠文堂新光社などから、この手の児童向けの科学読み物は多数出ていたのだが、絶版にしてしまうにはなんとも残念。もったいない。本書を読んだ子供はかならず学ぶことの面白さを知ると思うのだけれどなあ。

 幸いにして本書は、その後こうしてふたたび日の目を見ることになったわけで、なんとか読み継がれて欲しいと思う。

 佐野先生のこちらなども事実上の絶版。初版は 1974 年。

4416291116雪国のスズメ (自然に生きる)
佐野 昌男
誠文堂新光社 1991-03

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 こちらはダイジェスト版という趣かな。

4378038951わたしのスズメ研究 (やさしい科学)
佐野 昌男
さえら書房 2005-01

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ホタルの歌

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書評/教育・学習

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うっかり

 携帯電話の請求明細を確認していたら今回の付与ポイントが 0 となっていて、不思議だった。確か請求金額 100 円に対して 2 ポイント、というのがソフトバンクのマイレージサービスだったような。

 で、調べてみると、例のごとく後ろのほうの小さなそして薄い文字でびっしりと書かれた但し書きの中にありましたよ。

契約事務手数料・機種変更手数料などの事務手数料、104番号案内電話料金、コンテンツ情報料、S!まとめて支払い利用料、携帯電話機の分割支払金/賦払金、消費税、ユニバーサルサービス料などはポイント加算の対象外となります。

 新スーパーボーナスを利用して端末購入する人が大半だと思うのだけれど、契約から三ヶ月目から端末代金の分割支払い金が発生する。同時に月月割といって基本料などを対象にして割り引いてくれるようにもなる。

 月月割の金額は契約時の端末ごとに設定されているので、いろいろ幅はあるものの、多いパターンは 2000 円といったところか。ホワイトプランで、S!ベーシックパック、あんしん保証パックあたりに加入すると、980 + 315 + 498 = 1793 。これらが割り引かれると。差額は約 -207 円(まだ 207 円は割り引いてもらえる)。

 普通は通話とか他社あてのメールとかを使うだろうから、その料金とか、あるいはパケット定額の分とかとのさらなる差額がでて、その分がポイント対象。

 よって、家族割引とかになっていて、ほとんど家族との通話やメールにしか使わないような人だとポイント対象となる料金が発生しないということにも。

 ただ、端末代金の分割支払い金だけは毎月発生するので 2000 円とか 3000 円とかの請求金額にはなる。でもポイント付与対象ではないのでポイントはつかない、と。うまいわあ。

 現状の自分の使い方だと端末代金の支払いが完了するまでは、ポイントほぼ 0 となるのだろうなあ。ますますポイントの使い道がない。わずかに残っている分はただただ消滅を待つだけ。

 ま、月々の支払いは減ったのでありがたいのだけれどねえ。

4488729029消滅の光輪 上 (創元SF文庫 ま 1-2)
眉村 卓
東京創元社 2008-07

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 SFM 連載時には少し読んだ。

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ぶたばあちゃん


4751514458ぶたばあちゃん
ロン ブルックス Margaret Wild Ron Brooks
あすなろ書房 1995-10

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 本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。

 絵本としては難しい「身近な者の死」「死生観」といったものに取り組んだ作品。

 人そのものにしてしまうとテーマが重過ぎるということもあってか、豚の姿を借りて描かれているところは工夫としてもよい感じ。ほとんどの子供にとって生きている豚はさほど身近な存在ではないと思うので、いってみれば他人事として客観的に見られるのかも。

 これが犬や猫であったらちょっと身近すぎて、抵抗を覚える子供もあるかもしれない。それでいて愛らしいイメージで描けるという点でもなかなかうまい選択だったか。

 全体として「死」という言葉もイメージも一切ない。なんとなく匂わす雰囲気だけで描いているのは意見の分かれるところかなと思うし、実際ちょっと抽象的すぎるのかもしれないとは思う。

 けれども、孫むすめとあちこちを見納めるために回っていく描写は、なかなかに胸に迫るものもあるし、なるほどと思わせてくれる。もしもそういうことが可能な最後(恐らくは体力的にということになるだろうけれど)を迎えられるのならば、そんなふうになにかを伝えられたら、それは素晴らしいことかもしれない。

 残念なのは、そんな抽象的な風景のまま突然に物語が終わってしまうこと。最後の絵を見ればすべて語っているでしょ? ということだろうとは思うが、子供に向けた絵本ということを思えば、子供にとっては意味不明・理解不能なまま終わってしまって「で、どうなったの?」と問い掛けたいところなのでは。

 難しいところだというのはわかるのだけれど、せっかくそうしたテーマを選んだからには、もう少し踏み込んでもよかったのではないかと思うし、またそうでなければ意味がなかったのではないかとも思う。中途半端になげてしまったという印象が残ってしまうのは残念。それくらい唐突な終わりかた。

 もっとも、そもそも小さな子供にそれを分からせようなどということは、無意味なことなのかもしれない。わからないままでよいことも、その時代にとっては必要なことなのかもしれない。



ぶたばあちゃん

  • マーガレット・ワイルド文/ロン・ブルックス絵/今村 葦子訳
  • あすなろ書房
  • 1575円
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書評/児童

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RMagickでカレンダー壁紙をつくる

 2G 時代ステーション(ソフトバンクモバイル、というよりもやはり J-Phone といいたいところかな、の自動配信とウェブ連動のサービス)で楽しみにしていた「キャラふぁくとりー」というのがあって、近年はそこで提供されるカレンダー壁紙を毎月張り替えて使っていた。常にカレンダーが見えるというだけでなく、オリジナルのキャラクターによる季節のイラストも愛らしくてよかったのだった。

 ところがそろそろ新しいものをと見に行った 6 月末のこと、「6/26 でサービスを終了しました」といった内容のページだけが存在する状態に。

 そういえばステーションはほとんどが 6 月一杯で終了するという話だった。

 もっとも遠からずそうなることは予測できたので、無地の壁紙を事前にダウンロードしておいた。それを使ってカレンダーを作ることに。

 さっそくにフォトショップエレメントあたりでやろうとしたが、なんだか面倒そうなので RMagick を使うことにする。

 RMagick は ImageMagick という画像処理のためのツールを Ruby から使うためのもの。テキストを貼り付けていくこともできるようなので、さっそくもろもろインストール。Windows 用の RMagick のパッケージには、ImageMagick のバイナリーのインストーラーもセットされているので面倒は少ない。とはいえ、大量のメモリを必要とするようで、バイオノートへの RMagick のインストールの際になんどか NoMemoryERROR がでて失敗。やむなく仮想メモリを無茶な数値にしてなんとか完了。

 ドキュメントやウェブの情報などを参考に、あれこれしていたらわりとあっさりとなんとか形になった。ただ、バージョンが古いものでは日本語がきちんと処理されていたようなのだが、現在のバージョンではうまく処理されない様子。どうやっても日本語は表示されない。フォント名の指定などでも全角文字があるとうまくいかなかったりする。

 RMagick の FAQ によれば、「覚えておいて欲しいんだけれど、だいたいのトラブルは ImageMagick に起因するものなんだからね」といった感じのことが書かれていた(のだと思う)。

 カレンダーを作成するにあたってはどうしても日本語(あるいは全角文字)が使えないと困る、ということではないので、ひとまずはシンプルに作ってみる。

 プログラムで想定しているのは、無地(カレンダーがないという意味で)の壁紙画像( 240 * 320 )にカレンダーを重ねる。日付と月数。祝祭日は色分けする。といったところ。祝祭日を判定させるために date2/holiday をインストール。というか date2 そのもの。るりまによれば、現在は date2 は date に統合されたというのだが、さすがに日本固有の祝日判定部分は除外されているようで、標準添付にはなっていない様子。

 実際にはカレンダー用ではないので、キャラクターの表情に重なってしまってくやしいところなどを調整するようにしたので、完成画像にするためには多少の細工が必要だけれど、基本はこれでいけるし、気にしなければこれで十分。なによりもいろいろ手間をかけずに毎月カレンダーを作成できるのが楽。その分、多少の調整はしようかとも思えるわけでもある。

 難をいえば、元はイラストによる PNG 画像なので 8bit カラーで十分なのだが、ImageMagick で生成される PNG 画像は 24bit 固定の様子。ドキュメントを少しみた限りでは画像情報として取得することはできるが、生成するときに指定することはできない。ゆえにファイルサイズが大きくなってしまうのが難。まあ、大きいといっても程度の問題で、扱いに困るようなものではないのでよしとしているけれど。

 遅ればせながら RMagick 面白いなあ、と思っているところ。

 それにしても Ruby会議2007 でそんな講演があったのだなと今更ながら知ったけれど、頭のどこかですぐに RMagick が浮かんだのを思うと、案外そのときの刷り込みが効いていたのかもしれない。ありがたいことだ。

Cal0907_s


# == calkg.rb ==

require "rubygems"
require "rmagick"
require "date"
require "date/holiday"

def usage
 print "usage: ruby calkg.rb base_picture_filename yyyy mm\n"
 exit()
end

usage if ARGV.size < 3

base_picture = ARGV.shift
year = ARGV.shift.to_i
month = ARGV.shift.to_i

days_of_month = Date.new(year, month, -1).day
cal_img = Magick::ImageList.new(base_picture)
@cal = Magick::Draw.new
year_month = Date.new(year, month)

# xpos, ypos : 横方向の初期値, 縦方向の初期値
# xpitch, ypitch : 横・縦方向の文字間隔
# month_fig_xx : 月数の色、文字サイズ
# month_name_xx : 月名の色、文字サイズ
# date_fig_xx : 日付の文字サイズ
xpos = 35
ypos = 100
xpitch = Integer((240 - xpos * 2) / 6)
ypitch = Integer(160 / 4)
month_fig_color = "red"
month_name_color = "red"
month_fig_point = 50
month_name_point = 20
date_fig_point = 20
@cal.font("Times-New-Roman")

def text_print(cal, xpitch, w_day, xpos, ypos, text, text_color, text_point)
 cal.pointsize(text_point)
 cal.fill("white")
 cal.stroke("white")
 cal.stroke_width(6)
 cal.text(xpitch * w_day + xpos, ypos, text)
 cal.fill(text_color)
 cal.stroke("none")
 cal.text(xpitch * w_day + xpos, ypos, text)
end

# 月数を作成
text_print(@cal, 0, 0, 50, 60, "#{month}", month_fig_color, month_fig_point)

# 月英名を作成
month_name = year_month.strftime("%B")
text_print(@cal, 0, 0, 90, 40, month_name, month_name_color, month_name_point)

#
# 日付を作成
(1..days_of_month).each do |d|
 w_day = Date.new(year, month, d).wday
#
# 日曜・祝日は赤色に、土曜は青色に、平日は黒色に
 if Date.new(year, month, d).national_holiday?
  text_color = "red"
 elsif w_day == 0
  text_color = "red"
 elsif w_day == 6
  text_color = "blue"
 else
  text_color = "black"
 end

 @cal.text_align(Magick::CenterAlign)
 text_print(@cal, xpitch, w_day, xpos, ypos, d.to_s, text_color, date_fig_point)

#
# 日曜になったら改行する
 ypos += ypitch if w_day == 6

end

# カレンダーを描画
@cal.draw(cal_img)

f_name = "cal" + year_month.strftime("%y%m") + ".jpg"

# 画像を保存
cal_img.write(f_name)


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るびま26号出てます

 [ Rubyist Magazine - Rubyist Magazine 0026 号 ]

 公開されてからちょっと時間はたちましたが、るびま 26 号がでましたね。今回は昨年の Ruby会議2008 以降に開催された地域 Ruby 会議の特集号といった趣。

 こうしてまとめられると閲覧性もよいですし、ありがたいです。なかなかすべて(でなくても)参加するのは厳しいところもあるでしょうから、話題として間接的に知ることができるのはうれしいことです。

 RMagick をさわっていたのでまだほとんど読んでいませんが、ぼちぼちと読ませていただこうと思います。

#Ruby会議2009 のささださんの「Rubyist Magazine が出来るまで」もちょっと気になる。いえ、ほかにもいろいろあるんですが。

#あと 2 号で空も飛べるはず。

B00005FN4Q空も飛べるはず
スピッツ 草野正宗 土方隆行
ポリドール 1994-04-25

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新・蚊遣り豚

 例年古きなつかし蚊取り線香を夏の蚊取りに使ってきたのだけれど、ふと思い立って電池式のものを買ってみた。

 うずまきの蚊取り線香は必要な長さだけ折って使えばよいわけではあるけれど、この見極めはなかなか難しい。というか、十分な時間使用しようと思ったら、ひと夏にけっこうな量を使う計算になるなとあらためて思ったしだい。

 これまでは割りと控えめに使っていて、だからといって蚊に刺され放題というわけでもなかったのだけれど、いざ横になってからあの羽音を耳にしようものなら、そこからが長い戦いになってしまうのだった。

 それを思えば、毎日十分な時間使って同等の価格(ほとんどが交換式の薬剤の値段)ということを思えば、案外悪くないのかもしれないという姑息な計算をしてみたのだった。まあ、ともかくこの夏使ってみたらわかるだろう、とも。

 ということで、アースの電池式黒豚蚊遣りタイプを購入。コンセントでないのでどこでも使えるし、やりようによっては屋外でも使えるはず。そもそも例年蚊に刺される多くは外で草取りをしているときなことを思えば、連れ出すってものかも。

 使ってみて驚いたのは、電池式なのに薬剤のカートリッジにもボタン電池がセットされていること。なんのために単三電池を使うのか。まあ、単三電池はファンを回すために使っているようなのだけれど、ボタン電池がなければ無駄なゴミも減らせるのにと、エネループな者としては思うわけだ。残念。

 ファンが本当に静かなのは評価が高い。枕元にあっても気にならない。

 いずれ書く予定でいる電池の処分が今不便になっているという状況もあるわけで。

 ともかく、この夏の蚊取りの成果はひとえに君にかかっているのだよ。蚊遣り黒豚くん。

B000R3DPTSノーマット蚊とりブタ60日 セット
アース製薬

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 ものがない。新製品前の処分価格だったか?

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RMagickで日本語が描画できない

 RMagick 2.10.0-x86-win32 を入れてみたのだけれど、なぜか日本語の描画ができない。ウェブを探してみてもこれというものが見つからない。

 Ruby 1.8.7-p174
 RMagick 2.10.0-x86-win32
 ImageMagick 6.5.3-10-Q8

 で、

require "rubygems"
require "rmagick"
img = Magick::ImageList.new("hoge.jpg")
gc = Magick::Draw.new
gc.font = "c:\\winnt\\fonts\\msmincho.ttf"
gc.pointsize = 30
gc.fill = "black"
gc.text(0, 0, "日本語")
gc.draw(img)
img.write("foo.jpg")

 とかしてみても画像で確認できない。半角の英数だと問題なく描画されるのだけれど。

 できているという例を見ても、これという違いはないように見えるのだけれど。違うといえば、バージョンといったところだけれど、そのせいなのかなあ。

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RNAルネッサンス 遺伝子新革命


490296807XRNAルネッサンス 遺伝子新革命
田原 総一朗
医薬経済社 2006-06-08

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 本が好き!経由で献本していただきました。ありがとうございます。

 ヒトゲノム計画などがメディアにも取り上げられたり、事件のニュースなどでもなにかとお目にかかることの多いのは DNA ですが、本書で取り上げるのはどちらかというと日の目をあまり見ないともいえる影の存在 RNA 。

 実際、理科の授業で覚えていることといっても mRNA だの tRNA だのという言葉くらいで、その実どういう役割であったとかはあまり覚えていない。

 ところが本書を読むと DNA なんかよりも格段に興味深い秘密が隠されているようだとわかって非常に面白い。

 たんぱく質を合成するさいに、DNA そのものがわざわざ出向いていってということはできないので(たとえるならばお寺などによくある絶対秘仏で、唯一無二なのでしっかりと安置されたままになっている)、その内容を伝えるために働くのが RNA (秘仏の代わりにそっくりに作られた仏像を普段は祀ったりする。ここでは伝達するので mRNA )。

 ところが、 DNA の内容は必ずしも必要な部分だけが連続しているのではなく、いくつか細切れになっていたりして、間には余分な部分がはさまれており、そのまま転写しても役に立たない。そこで転写のさいに mRNA は余分な部分をカットして必要な部分だけで完全な情報を転写する。

 さらには、その中のすべてを転写するのではなくて、ときによってはそのうちのいくつかを取捨選択して新しい形を作ることも行うという。

 そうした様々な能動的な機能を RNA がもっているということはこれまで知らなかった。

 そもそも RNA には世界の研究者はあまり目を向けてこなかったらしい。それまでは DNA が王様みたいなもので、やはりメインストリートは DNA 研究だろう、といったような認識が研究者はもちろん、世間的にもそんな意識があったのかもしれない。

 ところが、ヒトゲノム計画に関して日本は立ち遅れてしまい、結果としてほとんどの権利はアメリカなど欧米が持っていってしまう形になり、なにかしようとすれば必ずロイヤリティーを払わなくてはならないようになってしまったという。

 その同じ轍を踏んではいけないと、やっきになっていまこそ RNA に関して国としても企業としても予算をつぎ込んで研究していく時期だと、手をつくしてはいるらしいのだが、どうにも日本は腰が重いらしい。

 今、RNA を利用して新薬開発に大きな期待がもたれているらしい。RNA には非常に能動的な能力があるということとも関係しているようで、たとえばウィルスなどに対して増殖を止めるためにたんぱく質をつくれなくするということなどが考えられているらしい。ウィルスのたんぱく質合成にあたって作られる RNA にたいして転写の向きを逆にした遺伝子を写し取った RNA (アンチセンス RNA )を作り出し、この二者が結合して二本鎖の RNA となるともはやたんぱく質が合成されなくなる。それによって無害化してしまうのだそうだ。

 これが特定のがん細胞であったり、ウィルスなどに対して作ることができ、他の健康な細胞などには影響をあたえずに送り込むことが確実にできるようになれば、飛躍的な医療の進歩になりそうだ。

 抗体を使った薬が効くかどうかは受容体があるかないかで決まるという。これは人によってさまざまなために、同じ薬を使っても全然効かない人と、劇的に効く人とがでてくるという。その意味では、数多くの抗体で薬が作られることが、多くの人を救うことにつながるのでしょう。

 わけてもアプタマー RNA によるものは、モノクローナル抗体に比べて、より有効でより安全・安価で供給できると期待されているということで、難病治療に対して大きな期待が持てる。

 期せずして「万物を駆動する四つの法則」と重なったのが、アデノシン三リン酸( ATP )の話。アミノ酸からたんぱく質を合成するときにはエネルギーが必要なのだが、そのエネルギーの直接の供給源となるのが ATP 。ATP が切り離されてアデノシン二リン酸( ADP )になるときにエネルギーを出す。このエネルギーについて熱力学の法則できちんと説明される。まさに万物を駆動しているということを実感する。

 余談としては、学術誌の話がでてくる。どうしても「サイエンス」や「ネイチャー」といったところに英語での論文を出さなくては、どうにもならない現状というのがあり、それが日本人の活躍にひとつの障壁になっている部分は少なからずあるだろうというもの。
 もともとは日本にも世界に認められた学術誌があったそうなのだが、次第にみな「サイエンス」などに発表することを重視していってしまい、ついには消えてしまったという。
 もちろんそんなことにばかり責任をおしつけてはいけないのだろうが、欧米以外の人々にとっては、いろいろ簡単にいかない事情というのも避けられないのは確かなのだろうなと。

 12 ポイントの活字が行間を十分にとって印刷されているので、本としてのボリュームにしてはあっという間に読むことができます。インタビュー形式ということもあります。とはいえ興味深いエッセンスの部分を存分に味わえ、さらなる興味をかきたててくれる内容にしあがっていると思います。

 できればもう少し小さ目の活字でもよかったのではと思わないではないですが。ページ数はグッと減ったでしょう。とはいえ、読みやすさも考慮すればこれで正解だったのかもしれません。

 極端に難しすぎないので、多くの人におすすめできる一冊でしょう。


#あわせてどうぞ

4152090073万物を駆動する四つの法則―科学の基本、熱力学を究める
Peter Atkins 斉藤 隆央
早川書房 2009-02

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RNAルネッサンス 遺伝子新革命

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書評/健康・医学

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LE PETIT PRINCE

 24 日夕刻付けで次のようなメールが担当者様より届きました。

ブログを拝見しました。こちらとしては、紙面を読んでいただき、貴重なご指摘をいただきましたので、誠意を持って対応してきたつもりです。

それだけに、送信した文面を無断転用するといった対応を取られたことは非常に残念です。
そうした目的であるなら、やりとりは打ち切らせていただきます。
ご指摘は今後の参考にさせていただきます。ありがとうございました。
信濃毎日新聞社報道部 ○○○○


 「そうした目的」がブログに書くことをさしておられるのか、はたまた違うことを想像されているのかはよくわかりませんが、次のようなメールを送信しておきました。

拝啓 ○○様

これまでお忙しい中にもかかわらず、長期にわたり、誠実にご対応いただきまして、誠にありがとうございました。

敬具


 メールを送信されるに至った経緯については、おおかた分っているのですが、それをここで触れることに意味はないのでやめておきます。

 責任を放棄されてしまったため、残念ながら、もう「答えにいたるためには問題が不十分であった」ことも、「そもそもの答えにいたった出題者の考え方・論理が科学的に間違っている」ことも、説明されることはないのでしょう。

 出題者様としては、今ごろはホッと胸をなでおろされているところでしょう。これで自らの非をなかったことにできるのですから。

 ということで、なんの解決もないままにこの件は終わることとなりました。

 実験をしてくださった方、いろいろのご意見をいただいた方のおかげで、思考を深めることができましたことに感謝します。


 恐らく、もうわざわざこのページを見るなどということはされないと思いますが(お忙しいようでもありますので)、信濃毎日新聞社に在籍されておられるからには当然ご存知かと思われる桐生悠々の言葉を、ぜひともお贈りしたいと思います。きまぐれにでも読んでくださるとよろしいのですが。(いずれも青空文庫より引用しました)

言いたいことを、出放題に言っていれば、愉快に相違ない。だが、言わねばならないことを言うのは、愉快ではなくて、苦痛である。何ぜなら、言いたいことを言うのは、権利の行使であるに反して、言わねばならないことを言うのは、義務の履行だからである。

「言いたい事と言わねばならぬ事と」


科学の雰囲気が一般的に理解されなければ、近代の社会は崩壊する。将来の社会は恐らくば科学の各分派に於ける雰囲気と、主要なる事実を簡単に示し、そして記者の意見に拘泥しない非個人的新聞を必要とするだろう。科学者に接触したものは、如何なる者でも、最近の科学的仕事の一般的説明が、如何に屡研究者の態度ではなくて、如何に事実を与うるにあることを知るだろう。


宇宙を語り、そしてこれを伝えるには、固よりかかる科学的新聞記者たることを必要とする。だが、世俗的なる普通の新聞記者も、将来に於ては、これと同様科学的であらねばならない。
「科学的新聞記者」


#これにともない回答待ちのために公開を遅らせていたふたつ(これこれ)を公開しました。

#実際、その後はまるっきりアクセスはないですね。


あなたの結果を教えてください: つらつらぐさ
標準モデル結果: つらつらぐさ
主催者側の発表: つらつらぐさ
ひとまずきれいな画像をあげなおしておきます: つらつらぐさ
ひとつの結果: つらつらぐさ
分かっているのかなあ: つらつらぐさ
ひとつの結果(2): つらつらぐさ
ひとつの結果(2)の2: つらつらぐさ
意見には個人差があります: つらつらぐさ
Cのための2つのモデル: つらつらぐさ
問題の問題と回答の怪と: つらつらぐさ
LE PETIT PRINCE: つらつらぐさ

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問題の問題と回答の怪と

 あらためて問題を示します。(実際の画像はこちら


水を七分目ほど入れたグラスと空のグラスに、八つ折りにしたティッシュの帯を二本掛けます。五、六時間置くと水は半分だけ空のグラスに移ります。次に、グラスを三個、台を使って段違いにして置きます。最上段のグラスにだけ水を入れ、それぞれのグラスにティッシュの帯を二本ずつ渡します。五、六時間すると、さて、今度は水はどうなっているでしょう。

A 中段のグラスにほとんど移り、下段は空のまま。
B 中段、下段のグラスに半分ずつ移っている。
C 下段のグラスにほとんど移っている。


 出題者の解答は次のとおり。

C「水は、ティッシュの繊維の毛管現象で、まず上まで吸い上げられます。上まで引き上げられると、水は高い方から低い方へ流れます。この原理で、ティッシュが吸収した水を除いたほとんどの水が、次々と下段のグラスに移るというわけです」


 「すべての水が一番下のグラスに移る」という結果になるように実験することは可能です。ただ、そのためにはいくつかの条件をきちんと満たすことが必要です。しかしながら、それらのことが明示されていないなかで、各家庭にあるグラスを用意し、適当なもので段差を作って実験することが想定されている今回の状況において、誰がおこなっても「すべての水が一番下のグラスに移る」という結果になることはかなり難しいことです。

#そもそもこの実験には結果を左右する重要な要素の設定が欠けているわけなのですが

 そこで、この問題の解答は間違っているのではないか、という問い合わせをしたところ、出題者から帰ってきた回答が次のものでした。


 「どうなる?グラスの水」について、ご質問をいただきました。

 この実験は毛管現象のおもしろさについての実験です。圧力の違いで水が流れるサイフォンの原理と混同しがちですが、この場合はティッシュの繊維をグラスの水が表面張力によってはい上がり、ティッシュの折れたところからは重力で流れ落ちるという仕掛けです。ですから、ティッシュの長さが関係するとすれば、はい上がる高さの方で、2番目、3番目に垂らしたティッシュは長くても短くても構いません。水位とも関係ありません。
 私が行った実験では水は3つ目のグラスにほとんど移りました。貴殿の検証ではうまくいかなかったようですが、何が原因か分かりません。もう一度行ってみてください。水の移動が目に見え、ご理解いただけると思います。


問題点1:ティッシュの折れたところからは重力で流れ落ちるという仕掛けです

 ティッシュが折れ曲がって隣の空のグラスに落ちていくときも重力ではなく表面張力です。解答のなかでも「上まで引き上げられると、水は高い方から低い方へ流れます」と書かれていますが、同様の間違いです。

問題点2:2番目、3番目に垂らしたティッシュは長くても短くても構いません。水位とも関係ありません。

 ということは先の標準モデルとした実験も本来であれば「すべての水が一番下のコップに移動」しなくてはいけないということになります。(このモデルでも、このモデル(の二番目の失敗モデルのほう)でも成功しなくてはいけないらしい)

 また水位とも関係ないということなので、上にあるグラスの水位が、隣のグラスに渡したティッシュ先端よりも低く(実際には同じに)なっても、水は移動を続けるということになります。これはあり得ません。

Sample1

 毛管現象は表面張力によって起こります。これは出題者も理解しているようです。これにより水面よりも上に水が吸い上げられるような形になっています。実際は、微細な管壁や繊維にへばりつくことによって吸い上げられているのです。この毛管は上から横に伸びようと、さらに下向きに伸びていようと毛管現象に違いはありません。毛管が存在しさえすれば、進みうる限界まで伸びつづけようとするだけです。その限界は次の計算式で求めることができます。(Wikipedia を参考にしました)

h = 2Tcosθ/ρgr

 ティッシュに使われているパルプ繊維の直径は一般的には 0.02mm から 0.04mm 程度とのこと。また接触角θはおおむね 0 度として問題ないと考えられます。先の Wikipedia のページにガラス管と水の組み合わせの諸数値がでているので、それを参考にして計算すると、液面の上昇は約 74cm となります。仮にθをガラス管と同じとしても約 69cm となります。これは重力に逆らって上昇できる限界の高さをしめすものです。

 ティッシュの大きさはおおむね 20cm 四方なので、使用されている他の材料の影響を考慮したとしても、はしからはしまで表面張力によって水がいきわたるには十分であることがわかります。

 たとえば水撒きなどに使うホースではあまりあがらないでしょうが、ストローであればいくらかあがり、さらに細い管であればさらに水は吸い上げられます。管が細ければ細いほどその高さは高くなります。(実際にはその材質も関係します)

 ティッシュの場合、微細な繊維が毛管となって水は吸い上げられます。では、この水がそこから垂れ落ちるかというと、水面との位置関係で異なってきます。

 水面よりも上にティッシュの先端があるとき、水が吸い上げられる理由となっている表面張力によって垂れ落ちることを阻まれます。

 ちょっと考えれば分かることですが、水が上に吸い上げられていくということは、重力よりも表面張力のほうが勝っているわけです。下向きになったからといって表面張力と重力との力関係が変わることはありませんから、そのままの状態で重力によって水がでてくることはありません。管の終わったところ(繊維が終わったところ)でへばりつく壁がなくなるので、それ以上進まなくなるだけです。

 では、水を垂れ落ちさせるためにはどうすればよいかといえば、エネルギーを加えてやることになります。そのためにはティッシュの先端を水面よりも下におく必要があります。これによってその高低差による位置エネルギーにより水は先端から垂れ落ちはじめます。

 このため当然ながら水の移動が進み、水位とティッシュの先端との高低差がなくなった時点で水の移動は止まります。
Ab_rs


 同様に、真中のコップから一番下のコップに水が移るには、真中のコップの水位が一番下のコップへと渡したティッシュの先端よりも高くなる必要があります。それまでは一滴も水の移動はありません。(下図で E が D より高くならない限り「中」から「下」への水の移動はない。)
Base_sample


 出題者のいうように、その後も引き続き水が移動するとしたらそれこそサイフォンの原理が働いているわけですが、出題者みずからが「毛細管現象によるものでサイフォンの原理ではない」と書かれているとおりです。すなわちその後、水が移動できる原理は働いていないのです。

 にも関わらず、表面張力による毛細管現象で持ち上げられた水が、その水位よりも上にある出口から垂れ落ちるということは、下の水を上にくみ上げることができるということを意味します。

 ひとまず、それが可能としましょう。ここで、次のような実験装置を作ってみます。上のコップ(あるいは水槽)からは水路で下のコップ(水槽)に水を流します。これはまさしく重力です。その途中に水車をおきます。水車にはモーターをつないで発電させます。下のコップの水は毛細管(実験ならばティッシュでもよいでしょう)を上のコップにまでもっていき、水が落ちるようにします。これで水の循環ができます。永久機関が完成しました。

 出題者はそれができるという意味のことを言われているわけです。

 現在、熱力学の法則などによって永久機関は実現できないというのが共通の認識であり、これは避けられません。(そもそもこのような毛細管を利用した永久機関のアイデアは遠い昔からアイデアとしてはあったものの、実現できないことはすでに証明されています)

(4)毛管現象を利用したもの

 水の中に中空の細い管を突込むと、水は、管の中にひとりでに昇っていく。水とガラスの付着力が大きく効いているこの現象を、毛管現象(あるいは毛細管現象)といっている。ここでは、昇った水の落下を利用して水車をまわそうというのである。
 これも空想だけで、実際には不可能である。水が細い管の中を昇っていくのは確かであり、たとえば手拭いなどでは繊維のすきまを通って水が昇る。だから手拭いをつるして、その下部だけを水に浸せば上の方までぬれてくる。
 しかし、このようにして毛管現象で昇った水は、たとえ穴があっても落下しないのである。水が、ガラス管や繊維にあくまでへばりついていると思えばいい。絵の、ステッキ状の管の中は水が一ぱいにつまるだろう。しかし先端の穴からは、水はこぼれようとしない。(P.58-59)
「マックスウェルの悪魔」都筑 卓司、講談社ブルーバックス


Capillary_action_maxwell


 本当に実験をされたのでしょうか?

 もちろん、Cの答えを実現するモデルは存在します(こちらの上にある実現モデル)。それは事実です。問題は「いかなる条件下でもそれが可能かどうか」というところです。

 重要なのは、この実験にはいくつもの重要な設定が欠けているにも関わらず、答えが特定されているということです。

 すなわち、コップの大きさ、段差の高さ、コップに渡したティッシュの先端の位置、などの条件が異なると結果もまた異なってくるからです。条件次第で A 、B 、C 、いずれの結果を導きだすことも可能ですし、いずれの結果にならないこともまたあります。

 C の結果を得ようとするには次の図のような位置関係を用意する必要があります。
C_model


 コップの水をすべて移動させるのですから、ティッシュの先端はコップの底と同じかやや下にまで達しなくてはなりません。ティッシュはおおむね 20 センチメートル四方ですからコップの深さは 10 センチ程度である必要があります。

 また、7分目まで水をいれるのですが、この水が最終的に一番下のコップにすべてはいるためには、段差がこの水位とほぼ同じくなければなりません。なぜなら、一番下のコップに水がたまっていく途中で水が垂れ落ちるティッシュの先端に水面がきてしまい、以後は真中と下のコップとの水面が同じになるところで移動はとまってしまうからです。(実際にはティッシュが吸収している分などがあるので、一番下まで移動した水の量は、はじめのものよりもやや少なくなります)

 また水位とティッシュ先端との高低差が次第に小さくなるにつれて、位置エネルギーが小さくなるので、水の移動速度も遅くなっていきます。

 これらについてはウェブ上の次のページなどからも推測することができます。


Let's Try 理科実験 その100

2001年5月号/容器の中から逃げ出す?水! | NGKサイエンスサイト|日本ガイシ

毛細管現象で風呂の水が全部屋根に上がる? - BIGLOBEなんでも相談室

毛細管現象 - Wikipedia


 以上のように、この実験クイズにおける答えは、家庭にある適当なグラスや段差になるものを用意して行った結果、答えとして示された C のように必ずなるということは、必ずしも言えません。また、その理由として示されている内容は科学的に間違っています。


 結論:
 「この問題で、この答えを期待するには、必要な条件が明示されていないため、無理があります」
 「答えにいたる説明・考え方が科学的に間違っています」

 と、わたしは考えますが、間違っているでしょうか?

追記:6/27
 何度も手を加えたにもかかわらず忘れていたことがあるので追加。

 それは時間の問題です。何人かのかたが実際に実験された結果を見ても、わたし自身の結果を見ていただいても、いずれも 5、6 時間でというのはなかなか難しかったのが現状でした。

 もちろんそれが可能となるモデルは、あるいは存在するのだろうとは想像されますが、なかなか至難の業であるのではないでしょうか。

 そもそも平らなところにおいたふたつでの実験でその時間を要し、段差をつけたとはいえ三つに増えたことを思うと、なかなか同じ時間でというのは厳しいものがありそうではありました。

 逆にいえば面白い自由研究の課題にもなるかもしれません。最適解を見つけ出して欲しいものです。


あなたの結果を教えてください: つらつらぐさ
標準モデル結果: つらつらぐさ
主催者側の発表: つらつらぐさ
ひとまずきれいな画像をあげなおしておきます: つらつらぐさ
ひとつの結果: つらつらぐさ
分かっているのかなあ: つらつらぐさ
ひとつの結果(2): つらつらぐさ
ひとつの結果(2)の2: つらつらぐさ
意見には個人差があります: つらつらぐさ
Cのための2つのモデル: つらつらぐさ
問題の問題と回答の怪と: つらつらぐさ
LE PETIT PRINCE: つらつらぐさ

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